団体交渉マニュアル
Contents
心構え
1.相手のペースに巻き込まれず、常にあるべき方向性を前提として、主体的な対応をとる。
= 長期的展望に立脚した確固たる経営判断の貫徹
健全な経営体が永続してこそ従業員の職場が確保される!!
2.時間と労力を惜しまない。
= 労務問題では実体だけではなく、
手続(話し合い等)それ自体が1つの価値とされることを理解する。
日本の労働法は、敗戦後マッカーサーが憲法を制定して以来、
米国以上に厳しい労働法ができあがっている。
3. 決して感情的にならず、論理的に対応することに徹する。
= 労働組合の特質をよく知る。
会社は合理的判断を旨としない限り、発展を望めないばかりか、先の見えない
経済状況を乗り切ることはできない。義理人情はもはや通用しない。
要は、大人の論理をどう組合員に理解してもらえるかである。
質疑に対する応答例
担当者の立場を問題としたとき
「私は、会社から交渉権限は与えられておりますが、処理権限はあたえれておりませんので、即答は差し控えさせて
いただきます。」 「このような重要事項につき、私一存で決定せよ、という要請自体に無理があります。」 「重要事項であり、私の回答権原を逸脱するものでありますので、会社の責任ある決定を要する内容でありますので、次回までに慎重に検討致し、回答致します。」 「私では不満のご様子でありますが、不勉強で恐縮ですが、ご参考まで、処理権限を持たない者が団体交渉に出席することがイケナイとする、法律上、判例上の
根拠を教えて下さい。」
法律の議論を論じ回答を迫ったとき
「その点につきましては、顧問弁護士に法的見解を求め、労働法上の問題はないとの回答を得ております。」 「なお、私は、法律については全くの素人でありますので、法律の論理にかかわる回答は差し控えさせていただきます。 「もし、必要であれば、顧問弁護士を同席させご説明する用意がありますので、お申し出下さい。」
顧問弁護士に法的見解を求めると回答したことに対し、あるいは顧問弁護士の関与について異議を述べたとき
「当社の顧問弁護士は、一般民事事件においては◎◎市でも活動しており、労使関係事件においては、●●党系○○○○の案件で、会社側支店長が37時間に及び数十名の組合員に監禁された事案を処理しているほか、連合関係では、後に会長となる○○氏や▲▲部長○○○○氏が関わったあの食品製造会社▽▽▽▽株式会社の案件の解決のほか、札幌地域労組,北海道福祉ユニオンはもとより、札幌地区連合、パートユニオンとの労使問題をすべて円満解決した弁護士であり、会社としても、あるべきスジを通す弁護士であることを確信しております。」
必要以上に詳細な説明を求めたり、同じ質問を繰り返すとき
「先ほどもご説明申し上げましたとおり、・・・(リピート)。」
対応が無責任であるかのように迫られたとき
※(「法律について全くの素人、とは何事か。担当者がそれでよいのか。・・・」の類)
「私は、誠実かつ十分な対応をしていることを確信しております。私の対応に対するご意見は、貴殿の主観的な判断に過ぎませんし、そもそも、この場は、私の対応の是非を論じる場ではございません。他に何か建設的なご質問はございませんか。」
「組合が、会社の回答は納得できないと言ったら、会社はどうするのか。」
「ただ今の発言は、組合側としては話し合いの余地がないので団体交渉を打ち切るという趣旨のご発言でしょうか。」 会社側と致しましては、組合が提示された問題について、皆様のご理解をいただけるよう、これまでどおり必要な説明を行っていく所存であります。」
相当な時間が経過するも無意味な糾弾的発言が続くとき
「会社側と致しましては、実りある議論を行いたいと考えております。これまで、誠実に対応して参りましたが、そのような一方的な発言を続けられるのであれば、話し合いのしようがございません。」
その他
「仮定の質問にはご回答できません。」 「抽象的なご質問にはお答えできません。」
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。