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固定残業代・固定割増賃金:札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス

実際のトラブル・紛争の予防・解決についてはこちらをどうぞ。

 

 労働基準法は、使用者に対して、使用者が労働者に時間外労働と深夜労働をさせた場合には、その労働時間数に応じて割増賃金を支払うことを義務付けています。

   この義務に関しまして、時間外労働等に対する割増賃金を、基本給に含めたり、固定額の手当てで支払う場合が多く見られます。

   つまり、実際の時間外労働、深夜労働等に関わらず、割増賃金を、その支払いに代えて種々の名称で一定額の手当等を支給することにより、その他には割増賃金を支給しないとする固定残業手当制度です。

   これは、算定の煩雑さの回避のためや、賃金コストの定額化のためなどに導入されています。

   その中で、割増賃金を固定給に組み込んで支給することとしていた事案につき、使用者に割増賃金の支払義務があることを認めた事案も多数あります(高知県観光事件 最判平成6年6月13日、テックジャパン事件 最判平成24年3月8日、小里機材事件 最判昭和63年7月14日など)。

   その判断基準としましては、一般的には、時間外労働等に対する割増賃金であることが労働契約上明確であること基本給と時間外労働等の割増賃金該当部分が明確に判別できること当該手当等が労働基準法所定の割増賃金額を上回っていて、下回る場合にはその差額分を当該賃金の支払期に支払うことが合意されていること、等が必要な要素とされていると考えられています。

 

   この点に関しまして、いかなる場合に割増賃金の定額払が適法となるのかの判断基準を明確にした最高裁判所の判決は存在しません。

   ただ、時間外労働等の割増賃金を、基本給とすることと定額払とすることには、所定の割増賃金に代えて定額の賃金を支払う制度であるという点で共通ですので、上記判断基準は、割増賃金の定額払の場合にも妥当すると考えられています。

   近時の裁判所の判断として、営業手当が割増賃金に該当するかが争われた事案におきまして、他の手当を名目とした定額残業代の支払いが許されるためには、実質的に当該手当が時間外労働の対価としての性格を有していること、支給時に時間外労働の時間数と残業手当の額が明示されていること、定額残業代を超える時間数の残業がなされた場合、別途清算する旨の合意が存在することが必要不可欠であるとして、当該具体的事情を考慮した上で、営業手当は定額残業代とみなすことはできないと判断しています(アクティリンク事件  東京地判平成24年8月28日)。

 以上は,ある時期までの裁判例を描写したものですが,その後,関連する最高裁判決もいくつか現れており,固定残業代の意義・性格・採否の善し悪し・採用する場合の留意点などが具体化されてきています。

 これらについては,稿を改めて解説することにいたします。

 ただ,私なりの結論めいたことを述べますと,採用するのは望ましくなく,採用するのは危険,ということになります。

 

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