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義務的団体交渉事項

 団体交渉の対象となる事項につきまして、企業として処理しうる事項であって、使用者が任意に応じる場合には、団体交渉事項となりますが、使用者が団体交渉を行うことが義務付けられる事項(義務的団交事項)が存在します。

  これは、 一般的には、組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの、とされています(エス・ウント・エー事件  東京地判平成9年10月29日)。

   労働者の労働条件その他の待遇とは、報酬、労働時間、休息、配転、懲戒、解雇、安全衛生、労災補償、教育訓練、福利厚生などが含まれ、人事考課の基準や手続きなども義務的団体交渉事項となります(日本アイ・ビー・エム事件  東京地判平成14年2月27日)。

 そして、それには、個々の組合員の労働条件も含まれると考えられています。ですので、特定の労働者の解雇等や賃金減額、配置転換などの人事につきましても、義務的団体交渉事項となります。

   これに対しまして、非組合員の労働条件につきましては、基本的には義務的団体交渉事項とはなりません。しかし、労働組合は、所属する組合員についての労働条件についての交渉権限を有していますから、非組合員についての労働条件にであったとしましても、組合員の労働条件に影響を与える場合には、義務的団体交渉事項となります。

   裁判所は、非組合員である新規採用者の初任給の切り下げの事案におきまして、将来に渡り、組合員の賃金に影響を与える可能性が大きく、組合員の労働条件との関わりが強い事項であることから、義務的団体交渉事項であると判断しています(根岸病院事件  東京高判平成19年7月31日)。

 さらに、事業譲渡、業務の外注や下請とすることのような経営権に関する事項につきましても、それが組合員の労働条件に関係する限りにおきましては、義務的団体交渉事項となります(国鉄事件  東京高判昭和62年1月27日、日本プロフェッショナル野球組織事件  東京高決平成16年9月8日など)。

   また、団体的労使関係の運営に関する事項とは、労働組合と使用者との間の団体的労使関係に関わる事項であり、団体交渉や争議行為に関する手続、労使協議制度、ユニオン・ショップ制度組合活動に関する便宜供与やルールなどが考えられます。

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