労働協約(概説)
労働協約とは、労働組合法14条に基づき、労働組合と使用者またはその団体との間の労働条件その他に関する協定であって、書面に作成され、両当事者が署名または記名押印したもの、と定義されています。
この労働協約には種々の機能があります。
1つ目は、労働条件や労働者の待遇等の基準を設定して、一定期間保障する労働条件規制機能があります。
2つ目には、労働組合と使用者間の関係におけるルールを設定する労使関係統治機能があります。
3つ目には、使用者の経営上の諸権限に対しての、労働組合の関与を制度化する経営規制的機能があります。
この労働協約は、単なる契約以上の効力が認められていますが、このような性質をどのように理解するのかが、労働協約の規範的効力、有利性原則の有無、債務的効力の有無、平和義務の効力、余後効の有無などを理解するために必要となります。
この点に関して、労働協約は、締結当事者の意図によりその成立の有無や解釈を左右されうるものですから、法律的には労働組合と使用者間の契約であると考えられます。
そして、労働協約は、その有する重要な機能から、労働組合法により個別的労働関係を直接規律する特別の一般的拘束力をあたえられていると理解されています。
労働協約の効力としては、労働協約中の労働条件その他労働者の待遇に関する基準である規範的効力(労働組合法16条)、労働協約中の規範的部分には属さずに、債務的効力しか生じない部分を意味する債務的効力、労働組合法による例外規定である事業場単位の一般的拘束力(労働組合法17条)や地域的な一般的拘束力(労働組合法18条)などがあります。
この労働協約は、有効期間の満了、期間の定めがない場合の解約、期間の定めの有無に関わらない解除・合意解約、目的達成、当事者企業の解散や労働組合の解散など当事者の消滅、反対協約の成立などの事由により終了し、効力を失います。
労働協約終了後の労使関係については、債務的部分については、法的根拠を失いますが、それまでの労使関係が協約規定により運営されてきたという事実は、慣行的事実として労働協約終了後も意味を持ち、使用者が、合理的理由や協議なしに一方的に廃止変更する場合は不当労働行為とされる場合があります。
規範的効力については、規定自体は効力を持続しないですが、余後効や労働契約当事者の合理的意思解釈により、労働協約失効後も労働協約上の労働条件は、これと異なる新たな合意が成立しない限り存続すると考えられています。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。