就業規則-1
事業においては、通常、多数の労働者が存在し、協働することになりますので、労働条件を公平かつ統一的に決め、職場規律を設定することが必要となります。
そして、この職場規律や労働条件に関する規則類を、就業規則として規定するのが一般的です。
就業規則は、職場における安全で効率的な業務遂行のための規律を設定する、多数の従業員を公平に取り扱う、従業員の賃金や処遇を一定の経営政策に従って制度化する、等の目的により制定されます。
労働者は、使用者との労働関係に入る際に、就業規則について一括承諾することが多いですが、そうでなくても、就業規則に定める労働条件や規律に従って労働関係が続いていく中で、就業規則を受容している状況となります。
その就業規則で設定されているのは、すべての労働条件ではありません。就業規則に定められるのは、各人ごとの個別的な労働条件や日常的な業務に関するものではなく、従業員に一般的に適用される労働条件や服務規律の制度です。
このように就業規則は重要な機能を営んでいますので、労働者保護のために種々の規定が存在します。それには、作成・届出義務、必要的記載事項、作成・変更についての労働者意見聴取義務、周知義務、法令・労働協約の優越等の規定があります。
つまり、就業規則に記載する内容には、絶対的必要事項と相対的必要事項があり(労働基準法89条)、就業規則は、法令や労働協約に反することはできません(労働基準法92条)。
そして、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める契約は、その部分については無効となり(労働基準法93条、労働契約法12条)、無効となった場合は、就業規則で定める基準が適用されます。
この就業規則は、常時10人以上の労働者を使用している事業場では、就業規則を作成し、過半数組合または過半数代表者からの意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届けなければなりません(労働基準法89条、90条)。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。