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「専門的知識等を有する有期雇用労働者などに関する特別措置法」:無期転換ルールの特例

有期雇用

 

はじめに

 「専門的知識等を有する有期雇用労働者などに関する特別措置法」(略称:「有期雇用特別措置法」)という聞き慣れない法律(平成27年4月1日から施行)があります。    

 無期転換ルールの特例を定めた法律の一つで,著名な労働法学者は,後掲の【文献紹介】のとおり論じています。

 民主党政権下で成立した平成24年の労働契約法の改正で,「無期転換ルール」が導入されました。しかし,特例や適用除外は設けられておらず,同年末に政権交代した自公政権が見直しをし,平成25年に「科学技術イノベーション創出活性化法・大学教員等任期法」改正,平成26年に「有期雇用特別措置法」制定という形で二つの特例立法が行われました。

「無期転換ルール」の導入

 平成24年の労働契約法の改正により、平成25年4月1日から「無期転換ルール」が導入されています。このルールは、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図ることを目的に、同一の使用者との有期労働契約が「5年」を超えて繰り返し更新された場合に、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換するというものです。

「高年齢者雇用安定法」の高年齢者雇用確保措置

 「高年齢者雇用安定法」において,「65歳までの雇用確保(義務)」に加え,令和2年の改正で,65歳から70歳までの就業機会を確保するため,高年齢者就業確保措置としての確保のために事業主が講ずるべき措置を高ずる努力義務が新設されました(令和3年4月1日施行)。

 もっとも,高年齢者雇用安定法では,平成6年の改正で,60歳定年制が強行的義務とされ,「65歳までの雇用確保(義務)」は,平成16年の高年齢者雇用安定法改正により義務規定化されておりました。

 つまり,これまでも,定年を65歳未満に定めている事業主は,次のいずれかの措置(「高年齢者雇用確保措置」)を講じなければならないとされていたのです。

 ①65歳までの定年引上げ

 ②定年制の廃止

 ③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)

 この高年齢者雇用確保措置の中で,もっとも多くとられている措置は,③の「継続雇用制度」です。

 そして,定年者を再雇用する場合は,退職手続を取った上,退職金の支給対象から除外し,1年更新の有期労働契約を締結するのが一般的のようです。

無期転換ルールの特例について

 退職手続を取った上,1年更新の有期労働契約を締結したとしても,同一の使用者との間で,有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合に,労働者の申込みにより,無期労働契約に転換する場合に当たる場合があり得ます。

 そのような場合を想定し,「有期雇用特別措置法」では,無期転換ルールの特例を定めています。

 適切な雇用管理に関する計画を作成し,都道府県労働局長の認定を受けた事業主(特殊関係事業主を含む)の下で,定年後に引き続いて雇用される期間は無期転換申込権が発生しません(65歳を超えて引き続き雇用する場合にも無期転換申込権は発生しません。)。

 この無期転換申込権が発生しないとする特例を享受するためには,法定の申請をして特例都道府県労働局長の認定を受けなければならないのですが(「第二種計画認定)」),そもそもこのような特例があることを知らない事業主もおられるようです。

【文献紹介】

(水町勇一郎『詳解労働法(第2版)』[2021年,東京大学出版会]405頁以下)

[引用始め]

(5)科学技術イノベーション創出活性化法・大学教員等任期法,有期雇用特別措置法による特例

 2021(平成24)年労契法改正により有期労働契約から無期労働契約への転換(18条)か定められた後,これに法令上例外を設定する動きが現れた。

 まず,競争的資金などによって期間を定めて実施される研究プロジェクトに従事する研究者・研究補助者,学年・学期ごとに雇用される大学の非常勤講師について,………。……,2013(平成25)年12月に研究開発力強化法および大学教員等人気法が改正された(2014[平成26]年4月施行)

 次に,産業の国際競争力の強化,国際的な経済活動の拠点の推進を図る観点から,新規開発企業やグローバル企業等と有期労働契約を締結する者について無期転換ルールの特例を定めることが,政府の産業競争力会議等で要請された。2013(平成25)年12月に成立した国家戦略特区法でその方向性が確認され(附則2条),2014(平成26)年11月には,労契法18条の特例措置を具体的に定めた「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(有期雇用特別措置法)が成立した(2015[平成27]年4月施行)。この法律により,①5年を超える一定の期間何完了することが予定されている業務に就く高度専門的知識等を有する有期雇用労働者で年間賃金額が1075万円以上のものについては,当該業務に就く期間(上限10年)は無期転換申込権が発生せず,また,②定年後に有期労働契約で継続雇用される高齢者については,定年後引き続き雇用されている期間は無期契約転換権が発生しないものとされている(8条,同法施行規則1条)。この特例の適用を受けることを希望する事業主は,当該有期雇傭労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置を定めた計画(①については「第一種計画」,②については「第二種計画」と呼ばれる。)を作成して厚生労働大臣に提出し,その認定を受けなければならない(4条以下)。

[引用終わり]

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