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労働基準法上の人権擁護規定(不当な人身拘束の防止①)

不当な人身拘束の防止規定として、労働基準法5条は、使用者は、暴行・脅迫・監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって労働者の意思に反して労働を強制してはならない、と規定しています。

   具体的には、強制労働の禁止、契約期間の制限、賠償予定の禁止、前借金相殺の禁止、強制貯金・任意的貯蓄金管理の規制があります。

強制労働の禁止について

   過去において、暴行脅迫監禁等により、強制労働がなされていたことから規定されています。

   そして、現在では、経済的足止め策が多く問題となります。

   従業員の経済的足止め策は、契約期間中の終了を強制するためのもので、強制労働の禁止(事案によっては、賠償予定の禁止 労働基準法16条)に違反し、無効となります(東箱根開発事件 東京高判昭和52年3月31日)。

契約期間の制限について

   労働者は、期間の定めのある雇用契約を締結した場合には、やむを得ない事由による解約をなし得るにすぎません(民法628条)。

   つまり、労働者は、期間の定めによる拘束を受けることになります。民法では、あまりに長期間の拘束関係の防止のため、雇用期間が5年を経過し、または、雇用が当事者の一方もしくは第三者の終身期間継続すべきときは、5年を経過した後はいつでも3ヶ月前の予告で契約を解約できるとしています(民法626条)。

   労働基準法では、上限を原則3年とし、一定の高度の専門的労働者及び60歳以上の労働者については、特例で上限を5年としています(労働基準法14条)。

   これは、以前に民法の規定より拘束期間を短くしてきた身分的拘束関係の防止という考え方と、その後、労働市場の変化により、雇用形態や働き方の多様化・柔軟化の要請からでてきた規制の撤廃ないし緩和という考え方を調整したものです。

   行政実務によれば、この規定に違反して、上限を超える期間を定めた場合、労働基準法の強行的効力により、当該契約における契約期間が上限の期間に改められます。

   また、下限については、17条2項により、使用者は、期間の定めのある労働契約において、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない、と規定されており、これは訓示規定と考えられています。

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