高齢・少子社会の就業支援(概説)-1
日本では、平均余命が伸びるとともに出生率が低下しておりますので、現在、超高齢・少子社会へ向かっていると言えます。そして、そのための体制づくりとして、高齢労働者の雇用促進と女性の能力活用のため法制整備が進められています。
・育児介護を行う労働者に対する支援
・育児介護休業法
女性労働者の能力発揮、高齢・少子社会への対策の観点から、育児休業法が制定され、そして、増加する老人の介護体制の整備のため、介護休業の制度化の必要性が高まり、育児休業法の改正として、育児介護休業法が制定されました。
同法は男女共通に育児・介護支援のための休業等の権利を保障しています。
育児を行う労働者の支援措置としては、育児休業、子の看護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮等の措置が定められています。
そして、育児休業、所定外労働の制限、所定労働時間の短縮等については、子の年齢等について他より厳しい条件が定められていますが、小学校就学年齢に達するまでの間についても、措置を講じるように努めなけれならないとされています(24条)。
また、労働者の転勤の場合の配慮義務(26条)や妊娠・育児等を理由に退職したものについての再雇用特別措置を講じる義務(27条)も努力義務としてですが、規定されています。
介護を行う労働者の支援措置としては、介護休業、介護休暇、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮等の措置、等がさだめられています。
これに関しても、定められている要件を満たさない場合でも、家族を介護する労働者に対して、上記規定に準じた措置を講じるように努めなければならないとされています(24条2項)。
・育児介護支援措置の利用に対する不利益取扱いの禁止
事業主は、上記に義務付けられた制限措置を労働者が申請し、または実行したことを理由に、労働者に対して不利益な取り扱いをしてはなりません(10条、16条の4、16条の7、16条の9、18条の2、20条の2、23条の2)。
不利益取扱禁止規定は強行規定ですので、違反公については法律行為が無効となり、また不法行為としての違法性を生ぜしめると考えられています(広島中央保健生協事件 最判平成26年10月23日参照)。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。