有期労働契約の無期労働契約への転換
有期労働契約については、雇止めの不安があることにより労働者としての権利行使が抑制される等の問題があることから、労働契約法18条により、有期労働契約の無期労働契約への転換が規定されています。
現行法は、労働契約について、無期労働契約を原則とすることは採用しておりませんので、有期労働契約の締結自体は自由であり、締結の目的や理由も限定されていません。
そこで、労働契約法18条により、無期転換権が規定されています。本条は、無期転換権を、転換申込権の行使という形で労働者個人の選択によらせることとしています。
労働契約法18条は、同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の通算契約期間が5年を超える有期契約労働者が、使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日の翌日から労務が提供される無期労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者が当該申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約が成立することを規定しています(18条1項)。
つまり、無期転換権は、同一の使用者との間で有期労働契約の更新が1回以上行われ、かつ、通算契約期間が5年を超えている場合に発生します。通算契約期間を問題としますので、例えば、契約期間が3年の有期労働契約を締結した場合は、1回更新されれば、更新後の有期労働契約において無期転換権が発生します。
通算雇用期間が5年を超える有期労働契約が締結されて、無期転換権が発生したにもかかわらず、当該有期労働契約の契約期間の満了までに無期転換権を行使しなければ、当該無期転換権は消滅します。
しかし、通算期間が5年を超えた後は、無期転換権は有期契約の更新の度に発生します。
本規定は、無期労働契約への転換に際して、無期労働契約にある者との労働条件の違いを解消させることまでは意図していないと考えられており、無期労働契約に転換された場合の労働条件は、別段の定めのない限り、直前の有期労働契約と同一なるとされています(18条1項)。
別段の定めとは、労働協約、就業規則、個々の労働契約等をいうものとされています。
また、通算期間について、クーリング期間の制度が設けられ、無期転換に関しても、職種によっては特例が設けられています。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。