事業場外みなし労働時間制(在宅勤務)
コスト削減や、ワークライフバランスの観点からも、在宅勤務が増加していますが、労務管理の観点からも、労働基準法上注意が必要となるもののひとつに、労働時間の管理があります。
しかし、労働者が具体的指揮命令を離れて事業場外で労働する場合で、その労働の内容について、本人の自由裁量に委ねる場合は、実労働時間の算定が困難となります。
そこで、事業場外みなし労働時間制の適用が考えられます。
事業場外みなし労働時間制が適用されれば、就業規則等で定められた所定労働時間により勤務したものとみなされることになります。
また、所定労働時間を超えて労働する必要がある場合、その業務を遂行するために通常必要とされる時間を労働したものとみなすこととされていますし、この場合に労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときはその協定で定める時間を、その仕事をするために通常必要とされる時間とすることとされています(38条の2)。
よって、使用者は労働時間を把握するための作業が不要となり、訴訟が提起された場合にも、労働時間数についての個々の反証が不要となります。
事業場外みなし労働時間制が適用されるには労働者が労働時間の全部または一部について、事業場外で業務に従事すること、労働時間を算定し難いときであることが必要です(38条の2第1項)。労働時間を算定し難いときとは、労働時間を十分に把握できるほど使用者の具体的指揮監督を及ぼし得ない場合と考えられます。
そこで、業務内容が事前に具体的に定まっており、勤務状況を事前、実施中、及び事後の各段階で具体的かつ正確に把握できる場合には、事業場外みなし労働時間制の適用は否定される可能性があります。
また、事業場外みなし労働時間制を適用する場合であっても、労働したものとみなされる時間が法定労働時間を超える場合には、割増賃金等の支払いが必要となります。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。