労働契約法の基本原則:札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス
労働契約に関しまして、労働契約法では、労働契約における基本原則を定めています。
1つ目として、労働契約法は3条1項におきまして、労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする、と定めています。
本項は、合意原則を労働契約の基本原則として規定したものです。
労働契約は、労働者・使用者間に格差が存在するものの、基本的には労働者・使用者間の契約関係ですから、合意原則を基本に労働契約は締結、変更されます。そして、労働契約の解釈をする際にも、合意原則を尊重した解釈がなされるべきと考えられています。
2つ目として、労働契約法3条2項は、労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする、と定めています
この規定は、多様な雇用、就業形態で労働契約を締結することとなる労働者に、一般的な均衡の理念を規定したものとも考えられています。
そして、この原則は、有期契約労働者については、20条によりさらに強化されています。
3つ目として、労働契約法3条3項は、労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする、と定めています。
これは、現在、重要な課題の一つとされている仕事と生活の調和への配慮の原則です。
この規定も理念規定にとどまるものではありますが、労働契約の解釈や権利濫用の判断をする際に、重要となると考えられます(ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件 札幌高判平成24年10月分19日)。
4つ目として、労働契約法3条4項は、労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない、と定めています。
労働契約は、その性質上、当事者間の信頼関係が重視されるところ、本項は、労働契約の遵守義務を定め、さらに私法の信義誠実の原則を労働契約において具体化しており、重要な規定となります。
この規定は、労働者、使用者の権利義務を解釈する際の基準となり、また、付随義務の根拠規定にもなります(自衛隊車両整備工場事件 最判昭和50年2月25日など)。
5つ目として、労働契約法3条5項は、労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない、と定めています。
この規定も、私法の権利濫用禁止原則を労働契約に関して規定したものです。
この規定は、労働契約において、使用者の権利行使を規制し、労使間の利益調整のために機能しています。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。