管理監督者
管理もしくは管理の地位にある者(管理監督者)又は機密の事務を取り扱う者には、労働基準法上の労働時間(32条)、休憩(34条)及び休日(35条)、時間外労働や休日労働に対する割増賃金(37条1項)に関する規定が適用されません(41条2号 深夜労働に関する規定(37条4項)や年次有給休暇(39条)に関する規定は適用されます)。また、管理監督者に関しては事前規制がなく、使用者の判断で管理監督者として業務に従事させることができます。
そこで、管理監督者に該当するか否かは重要な問題となります。
労働基準法上の管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体の立場にある者とするのが行政解釈であり、裁判実務でもあります。そして、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきとされています。
その判断に際して、必要とされる要件は、1.事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められていること、2.自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること、3.一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていること(育英舎事件 札幌地判平成14年4月18日)とされてきましたが、必ずしも統一的な判断枠組みが定立・維持されているとはいえないとも考えられています。
裁判例は、経営に関する決定に参画するという要件につき、企業全体の運営ではなく、職務内容が少なくともある部門全体の統括的な立場にあることとするもの(ゲートウェイ21事件 東京地判平成20年9月30日、東和システム事件 東京地裁平成21年3月9日)もあり、また、職務内容・権限、経営への参画状況等から経営者との一体性を評価し、それが弱い場合には、それを補うだけの労働時間の裁量性と待遇が必要であるとするもの(ロア・アドバタイジング事件 東京地判平成24年7月27日)もあります。
実際に労働監督者性が争われる場合、飲食店小売店等の店長のような現場責任者の管理監督者性はほとんどの場合否定されています。企業における中間管理職ないし現場責任者の管理監督者性が争われた場合も、管理監督者性が認められた割合は低いです。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。