嫌なら代えろ!顧問弁護士の選び方・付き合い方
新進気鋭のA社長と当事務所の顧問先でA社長の先輩であるB会長の会話を紹介します。
経営者のパートナーである「顧問弁護士」がキーワードです。
A社長 顧問弁護士をお願いしたいと思うのですが、どのような点に注意して選ぶべきですか。
B会長 実力不足の弁護士は問題外ですが、相性があうかどうかが一番のポイントだろうね。
A社長 相性とは具体的にどのようなことでしょう。
B会長 会社の実情、ビジネスの内容、経営者自身の個性などによって異なるだろう。例えば、法律問題が発生し、経営者
が徹底して闘うと決意したのに〝和を以て尊し〟とするタイプの弁護士では、相手方に一方的に押され事態が悪化
することもある。争いばかりを好む弁護士が適切とはいえないが、紛争やトラブルはうやむやにせず闘わなければ
解決できないことも多々あるしね。
A社長 そうすると、きちんと話を聞き、身内のように親身になってくれる弁護士が良いですね。
B会長 その通り。でも注意しなければならないのは、顧問弁護士はわれわれ経営者の愚痴を聞くとか、同情してもらうた
めに依頼するわけではないということ。問題解決に向けて協働作業をしていく関係が理想。経営者は自分の置かれ
た状況を全て知っておく必要があるし、そのために弁護士はトラブルの個性や特殊性を具体的に把握し、今後どの
ように解決するのが適切か、われわれにきちんと説明できるかが重要だね。
A社長 弁護士を使う機会が多いB会長の現実的な意見ですね。
B会長 事件が多くて弁護士と接触が多いのではなく、何かと不安なことが起きたらすぐに顧問弁護士に相談するようにし
ているよ。
A社長 そんなに相談する機会がありますか。
B会長 ふと不安や悩みが脳裏をよぎったら、気の向くままに相談すればいい。われわれは法律の専門家ではないから、不
安や悩みが法律問題であるのかどうかさえ、認識できるとは限らない。相談することで、法律問題の存否、法的リ
スクの有無を理解できる。われわれが思っているのと全く別問題が隠されていて、ただちに対処しなければならな
いこともある。私はむしろ、頻繁に弁護士を使う工夫をしている。勉強も兼ねてね。だからストレスもため込まな
いよ。
良い顧問弁護士を探すのは、最高の治療を受けるために名医を探すのと同じ。とにかく会ってみないと。ピンと来
なければ依頼しなければいい。実際、私もどうも合わなくて、過去2度ほど顧問弁護士を変えているよ。
ところで、冒頭で実力不足の弁護士は問題外と言ったけど、次回はこの点もお話しよう。
A社長 よろしくお願いします。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。