団体行動の保護(民刑事免責)
一般に、団体行動とは、憲法28条にいう団体行動を意味しており、労働組合が行う団体行動には、日常的な組合活動と、争議行為があります。
労組法1条2項は、その本文において、刑法第35条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって、全項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする、としていますので、組合活動、争議行為の双方ともに刑事免責が定められていることになります。
そして、争議行為につきましては、労組法8条が民事免責を定めています。
労組法8条は正当な争議行為に関する規定ですので、組合活動におきましては、その民事責任につきまして、免責を受けるのかが問題となります。
この点に関しまして、法律規定をみてみますと、組合活動に関して直接に民事免責を定めた規定は存在しません。
しかし、組合活動にも民事免責の必要性は認められますし、そもそも憲法28条の団体行動権保障が、組合活動の民事免責をとくに除外したと解釈する根拠も見当たりませんので、組合活動についても民事免責の効果は肯定されています。
裁判所は、結論としては免責されたものもされなかったものも存在しますが、正当な組合活動には民事免責が及ぶとしている点は同じです。
具体的には、解雇反対のビラを配布した行為につき、組合活動に使用したとしてなされた解雇の事案におきまして、ビラでの抗議行動の呼びかけは、正当な組合活動として許される範囲のものであり、業務を妨害しようとの意図を持って抗議行動を呼びかけたと認めるに足る証拠もないとして、解雇を無効と判断したもの等があります(東京高判平成10年12月10日など)。
そして、この民事免責の効果は、労働契約上の問題だけではなく、使用者からの損害賠償責任につきましても同様に効果が及びます。
裁判所は、ビラ配布が、使用者の名誉、信用を毀損するものであるとしながらも、ビラ配布が労働組合の組合活動の一環として行われたところから、正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内のものである場合には、違法性が阻却されると判断しています(エイアイジー・スター生命事件 東京地判平成17年3月28日)。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。