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労働協約(債務的効力)-1

労働協約は、使用者と組合員間の契約ですので、全体的に債務的効力を有することになります。

   そして、労働協約は、労働条件、労使関係のルール設定など独特の機能を営んでおり、また、法律により特別な効力を付与されていることから、労働協約が有する債務的効力も、労働協約に特有の効力であると考えられています。

   労働協約中において、規範的部分に該当しないものは、債務的効力しか持たないこととなります。これには、使用者と労働組合間で、労使関係の運営について設定したものなどが該当します。

   具体的には、非組合員の範囲、ユニオン・ショップ、団体交渉の手続きやルール、争議行為のルール・制限、人事に関する事前協議や同意条項などが挙げられます。

   労働協約の債務的効力に、履行義務があります。

   これは、労働協約中の債務的部分については問題なく妥当しますが、規範的部分については、その効力により、労働組合だけでなく個々の労働者も具体的権利を取得していますので、組合自身による履行請求が必ずしも認められるとは限りませんので、注意が必要です。

   不履行については、原則として、履行を請求でき、生じた損害の賠償を求めることができます。

   次に、労働協約の債務的効力として、平和義務があります。

   協約当事者が、労働協約の有効期間中に、当該労働協約で解決済の事項の改廃を目的とした争議行為を行わない義務のことを、平和義務といいます。

   これは、契約法では信義則上、約定した一定事項をその有効期間中は尊重するのが当然と考えられていることや、労働協約が労使間の平和協定としての意義を持つことから、当然の義務と考えられています。

   平和義務違反については、違反当事者に対して、相手方当事者は損害賠償を請求できることになります。

   この責任の主体は、協約当事者である団体であり、争議行為実行者ではありません。

   平和義務違反当事者に対する、違反行為の差止請求に関しては争いがありますが、平和義務は差止請求権までを内容とするものではないとの裁判例が存在します(日本信託銀行事件 東京地決昭和35年6月15日)。

   平和義務に違反する争議行為が行われた場合に、参加者を懲戒処分にできるかについては、裁判所は、平和義務に違反する争議行為は、契約上の債務の不履行であって、企業秩序の侵犯にあたるとすることはできないとして、否定的に考えています(弘南バス事件 最判昭和43年12月24日)。

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