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ノーワーク・ノーペイの原則

  労働契約上の賃金請求権の発生については、労働契約法では規定がありませんので、民法の雇用や契約に関する一般規定が適用されます。

   民法によれば、労働に従事することと、その報酬たる賃金とは対価関係にあります。

   これを、ノーワーク・ノーペイの原則といいます(民法623条)。

   そして、労働者は、約した労働を終えた後でなければ報酬を請求できません(民法624条1項)。  

   つまり、民法上は賃金は後払いが原則とされています。

   期間を定めた場合は、その期間経過後でなければ請求できません(民法624条2項)。

   つまり、月給であれば、単位期間である月を終了した時点でしか報酬は請求できません。

   これら民法の諸原則は、任意規定ですので、当事者が異なる定めをした場合にはその定めが優先します。

   そして、労務の提供が履行されず、それが労働者の責任に帰する場合や、労働者・使用者双方の責任に帰することができない場合(民法536条)は、対応する賃金支払い義務も生じません。

   具体的には、労働者が、遅刻や欠勤により仕事をしなかった日や時間については、使用者には賃金支払い義務が生じないことになります。

  これは、上記原則からくるもので、懲戒による減給とは異なるものです。

   ノーワーク・ノーペイの原則から問題となるものとしては、争議行為や怠業的行為が考えられます。 

   労務が履行不能の場合に、労働者が賃金請求権を取得するには、労働者が債務の本旨に従った履行の提供をしていることが前提となります。

  ですから、労働者が、怠業や一部労働の拒否をしているような場合には、その内容・程度によっては、債務の本旨に従った労務の提供にはあたらないことが考えられ、その場合は、使用者が、労働者の労務の提供を拒否しても、使用者は、賃金支払義務を負わないこととなります。

  裁判所は、労働者が、病気のために従来の業務に従事できず、より簡易な労務への転換を求めたのに対して、使用者側がこれを拒否し、賃金を支払わなかった事案で、労働契約が、職種や業務内容を特定せずに締結されていた場合には、就業を命じられた特定の業務についての労務の提供が十全でなかったとしても、当該労働者が現実的可能性ある他の業務への労務の提供を申し出ている場合には、債務の本旨に従った労務の提供となると判断しています(片山組事件 最判平成10年4月9日)。

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