休職制度(精神の不調):札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス
休職制度は、就業規則や労使協約に基づき、認められる制度です。
これは、多くの場合、一定期間欠勤状態が継続することと、通常の業務を行うことができないことが要件となっています。
通常定められている欠勤制度である、傷病休職制度等に関連して、近時問題となっているものに、精神の不調、いわゆるメンタルヘルス不調があります。
精神の不調に関しましては、出勤が断続的であったり、仕事が手につかないなどの無気力状態が続いたりすることが多いです。
このような場合に、傷病休職とすることができるかは、就業規則等によることになりますので、定める際には注意が必要となります。
就業規則に、精神の疾患により業務上の必要性から休職を命じることができるような規定が存在すれば、欠勤が継続していなくても休職の発令をすることは可能と考えられています。
就業規則に、上記のような定めがない場合、断続的な欠勤を理由としては、傷病休職を発令することが困難となることが考えられます。
しかし、いかなる場合にも発令できないということではありません。
なぜならば、使用者は、労働者に対して安全配慮義務を負っています。裁判所は、労働者が現に健康を害しており、または、健康を悪化させるおそれがあると認められる場合には、使用者は、速やかに労働者を業務から離脱させて休養させる等の措置をとる労働契約上の義務を負う(石川島興業事件 神戸地姫路支判平成7年7月31日)としています。
また、労働者が医師の治療を受けず、業務に支障をきたし、職場秩序を乱しているような場合には、債務の本旨に従った労務の提供がなされていないということを理由に、使用者は、労務の受領を拒否することができるとも考えらえれます。
そうしますと、就業規則に特別の定めがなければ、病気欠勤の場合には、民法536条1項により、労働者は賃金請求権を失うとする考え方(農林漁業金融公庫事件 東京地判平成18年2月6日)もあることから、上記の労務の受領拒否も、実質上欠勤と同様に捉えることが可能となりますので、その状況が一定期間継続すれば、傷病休職を発令できるとも考えられます。
ただ、現実的には、あらかじめ就業規則等により、精神疾患をも考慮した規定を定めておくことが重要となります。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。