試用期間
「解雇」・「退職勧奨」の実践的対処については,
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試用期間は、当該労働者を試用という特別の地位において、実際に就労させ、人物・能力を評価して、本採用とするか否かを判断するために設けられます。
試用期間の長短等の具体的内容は、それぞれ異なりますが、この試用期間の法的性質については、裁判所は、期間の定めのない労働契約における、解約権の留保期間と考えています(三菱樹脂事件 最大判昭和48年12月12日、学校法人麹町学園事件 東京地判昭和46年7月19日等)。
そうしますと、使用者が解約権を行使しない限り、労働契約はそのまま継続し、使用期間の満了により、労働者は本採用となります。
この留保されている解約権の範囲・内容につきましては、裁判所は、その主要な根拠として、採否決定の当初においては、いわゆる適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い、適切な判定資料を十分に収集することができないため、最終決定を留保されること、をあげています。
そして、その範囲につきましては、留保契約権に基づく解雇は、通常の解雇とは同一に論ずることはできず、通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められてしかるべきもの、としながらも、留保解約権の行使は、解約権行使の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される、としています(三菱樹脂事件 最大判昭和48年12月12日)。
そして、留保解約権行使が是認されうる場合とは、企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合、と定式化されていると考えられています。
また、解約権行使の判断については、事実関係に即してなされています。解約が認められるためには、労働者の不適格性を示す事実が存在し、かつ、それが解約を正当化するほど重大であることが立証される必要があると考えられています。
この適格性の判断には、解約権行使の時期も重要な要素となりえます。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。