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定年制度と定年後再雇用:札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス

高年齢者雇用安定法
2020年改正法(2021年4月施行
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定年制と定年解雇制度について

   定年制とは、無期労働契約を締結している労働者が、一定の年齢に達した時に、労働契約が終了する制度をいいます。これは、労働契約の終了事由に関する特殊の約定ということになります。

   定年制には、一定年齢に達したことにより、当然に契約を終了させる定年退職制度と、一定年齢に達したことを理由として解雇する定年解雇制度があります。

   定年退職制度は、労働契約の終了事由の設定ですが、定年解雇制度は、解雇事由の設定ですので、労基法の解雇に関する規定が適用されることとなります。

 

   定年制度は、高年齢者雇用安定法の制定とその改正により、60歳を下回る定年は違法となり、さらに、雇用機会確保措置が義務化されています。具体的には、定年制の廃止、定年延長、65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかの措置をとらなければならなくなっています。

   そして現在では、65歳までの継続雇用制度を採用する場合には、希望する労働者全員に対する継続雇用制度が義務付けられています(高年齢者雇用安定法8条、9条)。

高年齢者雇用安定法について

   高年齢者雇用安定法は、高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とし、違反に対して行政措置規定が定められていることから、公法的な性格を有しており、私法的強行性を認める趣旨はないと考えられています。

   そうしますと、高年齢者雇用安定法9条1項は、65歳までの雇用機会確保措置を求める公法上の措置義務を定めたものとなりますので、この規定を根拠として、労働者が使用者に対して継続雇用制度の実施を求めたり、労働契約上の地位の確認を求めたりすることはできないことになります。

   この点に関しまして、裁判所は、私人たる労働者に、…事業主に対する継続雇用制度の導入請求権ないし継続雇用請求権を付与した規定とまで解することはできない、としています(NTT西日本事件  大阪地判平成21年11月27日 高年齢者雇用安定法9条1項違反による損害賠償請求も棄却)。

再雇用拒否

  しかし、再雇用拒否につきましては、権利の濫用、不法行為と認められる可能性があります(日本ニューホランド事件  札幌地判平成22年3月30日)。

   使用者が、雇用確保義務に違反した場合には、厚生労働大臣は助言・指導・勧告ができ、勧告に従わない事業主については、その旨を公表できると規定されています(10条3項)。

 

定年後再雇用

   雇用継続措置におきましても、行政解釈によれば、心身の故障のため業務に耐えられないと認められる場合や、勤務状況が著しく不良である場合など、就業規則に定める解雇事由または年齢によるものを除く退職理由に該当する場合は、継続雇用しないことができるとされています。

   ただし、これらは、継続雇用しないことについて、客観的な合理性があり、社会通念上相当であることが求められています。

   そして、欠格事由該当性が客観的に認められず、再雇用後の賃金や労働条件が特定できる場合、合意が成立したものと認められています(津田電気計器事件 最判平成24年11月29日※契約更新の事案)。

   ただし、事業主の拒否理由は容認できないとしながらも、再雇用後の賃金額について合意が成立していない場合には、再雇用契約は成立していないとしたものがあります(日本ニューホランド事件 札幌高判平成22年9月分の30日)。

定年後再雇用における労働条件

   ここで、定年後再雇用における労働条件につきましては、就業規則等で予め労働条件を定めておくことも、再雇用の申込みを受けて、使用者と労働者が個別に労働条件を定めることも可能です。

   そして、使用者と労働者が個別に労働条件を定める場合には、再雇用後の労働条件につきまして、使用者と労働者の間で労働条件が合意に至らない場合には、労働契約が成立しませんので、再雇用の拒否には当たらないと考えられています。

   そこで、定年後の再雇用におきまして、いかなる労働条件を提示しても良いのか、が問題となります。

   この点に関して、行政解釈としましては、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえ、雇用のルールの範囲内で、事業主と労働者の間で決めることができる、としています。

また、継続雇用制度の導入という高年齢者雇用安定法の目的から、事業主が合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、労働者との間で労働条件等について合意できず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、法に違反するわけではない、としています。また、定年前の労働条件等と定年後の再雇用措置としての有期労働契約における労働条件が異なる場合であっても、定年の前後でその職務の内容及び配置の変更の範囲等が変更されることが一般的であることを考慮すれば、特段の事情がない限り不合理とは認められないと解される、としています。

 

 なお,高年齢者雇用安定法の2020年改正法(2021年4月施行)についてはこちらをご確認ください。

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