退職した社員(従業員)への損害賠償請求―顧客・従業員の引き抜き、秘密保持義務違反行為や競業避止義務違反行為への対抗措置
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退職した社員(従業員)への損害賠償請求―顧客・従業員の引き抜き、秘密保持義務違反行為や競業避止義務違反行為への対抗措置
退職した社員が、顧客や従業員を引き抜いたり、秘密保持義務や競業避止義務に違反する行為に及んだ場合、企業にとっては深刻な問題となります。これらの行為に対する適切な対抗措置を講じることは、企業の存続と成長を守るために非常に重要です。以下では、実際の裁判例を交えながら、対応策や法律上のポイントについて解説します。
具体例:裁判例から見る現実
例えば、「フレックスジャパン・アドバンテック事件」(大阪地方裁判所平成14年9月11日判決)では、人材派遣会社間で派遣スタッフの引き抜きが行われました。このケースでは、退職した社員が退職後に競業他社に転職し、派遣先企業や派遣スタッフを組織的に引き抜いたことが問題となりました。
結果として、会社が損害賠償として請求した約7,965万円に対し、裁判所が認めたのはわずか628万円程度でした。この結果から分かるのは、企業が受けた損害を証明し、それに見合った賠償を得ることがいかに困難であるかという現実です。
企業として取るべき対策
退職した社員による不正行為を防ぐためには、事前の準備と適切な対応が欠かせません。
1. 秘密保持義務の強化
秘密保持義務は、不正競争防止法や労働契約上の義務に基づきます。特に、不正競争防止法では「営業秘密」として情報が保護されるには、
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秘密管理性
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有用性
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非公知性
の3要件を満たす必要があります。これをクリアするためには、
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秘密情報を明確に特定し
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アクセス制限を設け
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定期的に従業員に教育を行う
といった取り組みが求められます。
2. 競業避止義務の整備
競業避止義務は、労働契約中および退職後にも適用される場合があります。ただし、退職後の競業避止義務を課すには、合理性が求められます。その基準として、
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制限期間の長さ
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地理的範囲
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対象業務の範囲
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代償措置の有無
が考慮されます。これに基づき、合理的な範囲内で契約条項を整備することが重要です。
3. 紛争予防と対応の体制構築
紛争が起こる前に、問題を未然に防ぐ措置を講じることが理想です。これには、
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退職時の誓約書の取得
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定期的な就業規則の見直し
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弁護士によるリスクマネジメントの支援
などが含まれます。また、実際に問題が発生した場合に備え、証拠収集や迅速な法的手続きの準備を進めておくべきです。
弁護士が提供するサポート
当事務所では、これまでに多くの企業を顧問として支援してきた実績をもとに、以下のようなサービスを提供しています。
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法的リスクの分析と予防策の提案
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紛争が発生した際の迅速な対応
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裁判所での解決を視野に入れた戦略立案
経営者の皆さまにとっての「勝利」とは何かを徹底的に追求し、その実現に向けた最適な方法を提案します。これには、裁判での勝訴だけでなく、企業の長期的な利益を守ることも含まれます。
まとめ
退職した社員による不正行為への対応は、経営者にとって避けられない課題です。事前の準備や適切な対応策を講じることで、企業が受ける損害を最小限に抑えることが可能です。もしこのような問題に直面している、あるいは将来的なリスクを懸念している方は、ぜひ当事務所にご相談ください。30年以上にわたる経験と実績を活かし、最適な解決策をご提案いたします。
お問い合せをお待ちしております。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。