労働基準法等の適用範囲①(労働者概念)
労働契約法や労働基準法が適用されるには、法律が定める対象としての労働者、使用者に該当する必要があります。そして、労働契約法と労働基準法ではその目的が異なることから、その概念についても違いが生じます。
労働契約法において、労働者とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者と定義され、使用者とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者と定義されます(2条1項、2項)。
その適用範囲については、一方当事者が相手方当事者に使用されて労働し、相手方当事者が一方当事者に賃金を支払うという契約関係にあるかという点について判断していくことになります。
労働基準法において、労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者と定義され(9条)、使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者と定義されます(10条)。
労働基準法において、その適用範囲を画する基本概念は労働者ということになりますが、労働者たる要件については、事業に使用されること、及び、使用され賃金を支払われること、が必要となります。
上記の労働契約法と労働基準法では、労働者概念に違いがあります。
要件のうち、使用され、賃金を支払われるという部分は、労働契約法における、使用されて労働し、賃金を支払われる関係にあることという要件と同一であると考えられています。
しかし、労働基準法では、労働契約法における労働者という概念に加重して、事業に使用されること、という要件が存在していることになります。
そして、事業とは、一定の場所において相関連する組織のもとに業として継続的に行われる作業の一体をいうとされています。
つまり、個人が一時的に人を使用する場合等、事業にあたらない場合には、民法の雇用関係や、労働契約法上の労働契約とはなりえても、労働基準法は適用されません。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。