労使紛争(概説)
労働関係においては、なんらかの形で利害対立が生じます。
そこで、企業内、公的機関に予防のための制度は存在しますが、紛争発生にまで至ることも多いのが現状です。
労使紛争における紛争とは、労働関係当事者において、具体的な利害の対立を基礎として、一方当事者による自己の主張実現のための働きかけと、それに対立する他方当事者の反応が相互になされている状態を意味します。
そして、労使紛争には、集団的労使紛争と、個別的労使紛争とがあります。
集団的労使紛争とは、労働組合と企業との間の団体交渉等の関係において生じる紛争であり、個別的労使紛争とは、労働者個々人と企業との間の労働関係において生じる紛争をいいます。
「労働組合対策・団体交渉・不当労働行為」の実際ついては
こちらをご覧ください。
また、厳密には区別できないものもありますが、一応の分類として、労使紛争により争う内容に応じて、権利紛争と利益紛争に分けることが可能です。
権利紛争とは、契約や法の違反といった権利の有無や内容に関する紛争をいい、これは一般的には契約や法律の違反となりますから、当事者間で解決できない場合には、契約の履行や法の適用を裁判で求めることなります。
利益紛争とは、交渉における新たな合意の形成をめぐる紛争をいい、具体的には賃金に関することであったり、一時金の要求であったりしますので、集団的労使紛争となることが多く、交渉により解決すべきものとなります。
労使紛争は、労働関係当事者において生じますが、そもそも労働関係は、使用者が企業秩序を定立することにより、労働者を組織的に統制する関係となります。
ですから、労働者が、力をもつ使用者の統制に対して反抗するという図式になります。
ですが、個々の労働者は、紛争を起こしにくく、また、法律や制度について十分な知識を持たないことが多いです。
そこで、労働者と使用者の関係を対等にするために、団体的労使関係が制度化されており、そこで集団的労使紛争が生じます。集団的労使紛争である労働争議について、法律その他解決のための調整手続きが定めれています(労働関係調整法、労働委員会によるあっせん、調停、仲裁など参照)。
また、個別労働紛争について、簡易で低廉なものを目指し、法律その他労働行政機関による紛争解決の手続が定められています(個別労働紛争解決促進法、労働審判法など参照)。
近年においては、集団的労使紛争は減少し、数としては低レベルを保っていると考えられますが、経済情勢を背景に、個別労働紛争の増加が顕著にみられます。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。