TOP >  解雇 >  解雇:札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス

解雇:札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス

 

 企業を経営していると,いろいろな人材が集まります。優秀な人材は,企業にとっての財産です。

他方で,問題ばかり起こす社員もいます。こうした社員は周囲に悪影響を及ぼすので,解雇する必要があります。しかし,解雇は簡単には認められません。解雇についての知識は企業にとって重要です。

解雇とは?

解雇とは、使用者による労働契約の解約をいいます。

民法上は,雇い主と労働者が雇用の期間を定めなかったときは,両者は,いつでも解約の申入れをすることができます(民法627条1項)。したがって,解雇はいつでもできるのが原則です。雇用は解約の申入れから,2週間を経過することで終了します(民法627条1項後段)。

しかし,労働者保護の見地から,労働契約法で雇い主の解雇の権利は制限されています(労働契約法16条)。すなわち,「客観的に合理的な理由を書き,社会通念上相当であると認められない場合」でなければ,解雇権を濫用したとして,解雇が無効とされるのです。

これを「解雇権濫用の法理」といいます。解雇権濫用の法理は,過去の多くの事件での裁判所の判断が積み重なってできたものです。そういった事件のひとつとして,たとえば,日本食塩製造事件(最二小判昭50・4・25民集29巻4号456頁)があります。これは,労働組合を除名された労働者に対し,ユニオン・ショップ協定に基づいて解雇した行為が争われた事案です。

 

従業員を解雇するということ

「解雇をした従業員から突然訴えられてしまった」退職届

「能力不足の社員を辞めさせたいが、どのようにして辞めさせればいいかがわからない」

「労働基準署から突然連絡が入り、警告を受けてしまった」

従業員を解雇することは、経営者が考えるほど簡単ではありません。
能力不足や勤務態度の不良という理由で従業員を解雇する場合のハードルは、極めて高いのです。

 

解雇が無効となった事例

業務命令違反の労働者に対する4回のけん責(戒告)後の解雇を無効とした裁判例もあります。

「病気で元の業務を遂行できなくとも配置可能な業務を検討すべきである」とか、「平均的な水準に達していない」というだけでは不十分であり、「著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがないという場合でなければならない」などとして解雇を無効とした裁判例は珍しくないのです。

【整理解雇】

整理解雇の場合ということになれば、ハードルは低くなりそうに思えます。
しかし、抽象的にはそう言えそうですが、①人員削減の必要性、②解雇回避の努力、③被解雇者選定基準の妥当性、④労使交渉等の手続の合理性が要素とされ、実際の裁判例では、一つ一つの要素について、経営者が考えるより厳格に判断されるため、解雇が無効とされた事例が少なくありません。

【合意退職・自主退職】

合意退職あるいは自主退職の形を採ればよいだろうなどと考え、従業員に退職願を提出させる「退職勧奨」の方法で進めたのに、失敗される経営者もおられます。

現に、町立病院に勤務する臨床検査技師の退職の意思表示の撤回が有効であるとされた事例もあります(旭川地裁平成25年9月17日判決)。

 また、「退職勧奨」が上手く行かないので、持久戦でと、社員に自主退職をさせるよう仕向けようとして失敗した事例もあります。一人だけ別室に配置され(このような,いわば軟禁室を「パソナルーム」と呼びます)、会議や忘年会などにも呼ばれず、1日100件の飛び込みによる新規顧客開拓をノルマとされていた事案で150万円の慰謝料が認められた事例もあります。結果だけを見るとですが、大企業(大阪地裁平成27年4月24日判決[大和証券・日の出証券事件])、労働問題全般について言える事ですが、特に解雇の場面では、経営者の立場で考えると、複雑怪奇というほかない場合がしばしば起きますが、現実は現実として受け止めなければなりません。 例えば、出張旅費の着服で懲戒解雇された従業員からの退職金の支払請求に対し、約540万円の支払を命じた裁判例もあります(札幌地裁平成20年5月19日判決)。

 誰もが思い付く方法、世間の物知りのアドバイスにお手軽に飛びつくと、失敗も多いのです。このような方法を用いる場合は、きちんとした手順を踏んで慎重に対応をしなければ失敗します。

 

 

解雇予告

   労働基準法は、20条におきまして、使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない、と定めています(労働基準法20条1項本文)。

   そして、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りではないとして(労基法20条1項但書)、解雇予告制度の適用除外を定めています。

   この点に関しまして、懲戒解雇の場合であれば、通常、予告手当の支払いもなく、即時に解雇されますので、この労働者の責に帰すべき事由とは、懲戒解雇の有効性とは区別された判断であり、予告期間をおかずに即時に解雇されてもやむを得ないと認められるほどに重大な服務規律違反行為または背信行為を意味することになります。

   これは、懲戒解雇が有効である場合でありましても、解雇予告を省略すべきでないと認められる場合があり得ることにもなりますし、普通解雇の場合でありましても、解雇予告の適用除外事由に該当する場合があり得ることとなります(シティズ事件  東京地判平成11年12月16日等)。

   また、解雇予告制度の適用を除外する場合には、労基署長による除外認定を受けるべきものともされています(労基法20条3項、労基則7条)。

   つまり、除外認定を経ずに懲戒解雇として即日解雇した場合、除外認定手続を経ない代わりに予告手当を支払えば問題は生じませんが、そうでなければ、解雇の有効性や予告手当請求の可否が問題となります。

   この点に関しましては、裁判例におきましては、労基署長による除外認定につきましては、事実の確認手続にすぎないことから、解雇予告や解雇予告手当が必要であるか否かは、客観的な解雇予告除外事由の存否によって決せられるとしています。

   すなわち、客観的な除外事由が存在すれば、労基署長の除外認定を経ていなくても解雇は無効とはなりません(日本通信社事件  最判昭和29年9月28日)。

   また、除外認定を受けていても、客観的に見て解雇予告除外事由が存在しないときは、即時解雇を有効なものとすることはできないことになります(上野労基署長出雲商会事件 東京高判平成14年7月30日)。

   解雇予告手当に関しましても、除外認定を経ていなくても客観的な除外事由が存在していれば予告手当の請求はできないことになりますし(青梅建設事件  東京高判昭和47年6月29日)、除外認定を受けていても、客観的に除外事由が存在しなければ、解雇予告手当の支配義務が生じることになります。 

 

解雇が認められる「客観的に合理的な理由」

解雇が認められる「客観的に合理的な理由」(労働契約法16条)とは,菅野和夫『労働法』第11版738頁から739頁によれば,

①労働者の労務提供の不能や労働能力または適格性の欠如・喪失

②労働者の職場規律(企業秩序)の違反の行為

③経営上の必要性に基づく理由

④ユニオン・ショップ協定に基づく組合の解雇要求

の4種類に大別できます。

 

解雇権濫用法理

整理解雇の場合,解雇権が濫用されているかを判断するために,裁判所は

①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③被解雇者選定の妥当性、④解雇手続の妥当性といった4つの要素に着目しています。

   これらは、解雇類型によって異なりはしますが、一般的には、解雇理由が客観的に存在するだけでは足りず、それが労働契約関係を維持しがたいほどに重大である必要があります。

   そして、そのような客観的に合理的な理由が認められなければ、解雇をしても、解雇権を濫用したものとして無効となります。1.2.3.については、使用者側に課せられているハードルは高いと考えられています。

 

   さらに、客観的に合理的な理由があると認められても、当該解雇が、社会通念上相当として是認することができない場合には、解雇権濫用として無効となります。

   社会通念上相当として是認することができると認められる場合とは、一般的には、解雇の事由が重大な程度に達しており、解雇回避の手段がなく、かつ、労働者の側に宥恕すべき事情がほとんどない場合と考えられています。

 

   この解雇権濫用法理については、期間の定めのない正規従業員について厳格に判断されやすいものであり、採用の前提として特定の能力や技術などスペックを特定し、即戦力として中途採用された場合などは、解雇権濫用法理のもとでも、期待した能力・資質から大きく外れていた場合に、解雇が認められる場合もありますが、それでも改善の機会を与えるなどの配慮は必要となります。

 

   そして、解雇権の行使が権利濫用と評価される場合、不法行為(民法709条)となり、損害賠償請求がなされる可能性もあります。

 

解雇権濫用法理の効果(無効)

 解雇権濫用法理により、解雇が解雇権の濫用と判断された場合、その効果が問題となります。

 

   労働契約法によれば、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効となります(労働契約法16条)。

   この場合、裁判所は、本案訴訟においては、労働者が労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する判決を下すことになり、使用者は労働関係の継続を一律に強制されることになります。

 

   その際、当該労働者は、当該解雇は無効であるとの主張をするにあたり、信義誠実の原則(民法1条2項、労働契約法3条4項)の一内容である権利失効の法理が適用されます。

   つまり、当該労働者が諸般の事情から当該解雇を承認したものと認められる場合には、当該労働者は、信義則上、解雇が無効であることを主張できなくなります。

   諸般の事情には、異議なく退職金を受領して他に就職し、かつ長期間解雇の効力を争わなかった場合などが挙げられます。

   また、解雇後長期間を経過している場合も、訴えを提起することが信義則上許されなくなるとされています。

 

   また、解雇が無効とされ、復職する場合、解雇されてから解雇が無効と判断されるまでの間の労働者の就労不能は、原則として、解雇を行なった使用者の責に帰すべき事由によるものと考えられますので、労働者は賃金請求権を失いません(民法536条2項)。

   この点については、解雇期間中の賃金の算出方法や、当該労働者が他所で労働をし、収入を得ていた場合等、具体的金額の算出には種々の問題があります。

   そして、使用者の責に帰すべき事由によるものといえるかは、履行不能に至った理由・経緯・両当事者の態様、その際の状況などを総合的に勘案しながら判断されます。

 

   さらに、解雇権の濫用にあたる解雇は、不法行為(民法709条)として、使用者には損害賠償責任が生じる可能性があります。

   これは、労働契約上の権利を有する地位を確認しつつ、解雇を不法行為として損害賠償請求する場合と、使用者に見切りをつけ解雇の効力は争わず、解雇につきその不当性を主張して損害賠償請求する場合が考えられます。

   解雇の効力は争わず、不法行為として損害賠償請求のみを行う場合、労働契約は終了したものとして取り扱われますので、賃金請求自体は認められないと考えられますが、違法な解雇によって生じた賃金相当額の経済的損害や精神的損害の賠償が問題となります。

 

事例:解雇は要注意!深手を負う前に弁護士に相談を

 

会社経営者A氏から受けた従業員の解雇に関する相談を紹介します。

A氏 前田先生、いよいよA君を解雇することにしましたよ。

前田 えっ、聞いてませんよ。

A氏 能力不足で勤務態度の悪い従業員は解雇して当然でしょう。

前田 そんな簡単な話ではありません。「病気で元の業務を遂行できなくとも配置可能な業務を検討すべき」とか「労働能力が平均的な水準に達していないだけでは不十分であり、著しく劣り、かつ向上の見込みがないという場合でなければならない」などとして解雇を無効とした裁判例は珍しくありません。A社長のような理由で解雇する場合のハードルは極めて高いのです。

  また、出張旅費の着服で懲戒解雇された従業員からの退職金の支払い請求に対し、約540万円の支払いを認めた事例もあります(札幌地裁平成20年5月19日判決)。経営者としては、裁判所の判断は複雑怪奇でしょうが、現実として受け止めなければなりません。

A氏 では、従業員に退職願を提出させる「退職勧奨」の方法はどうでしょう。

前田 誰もが思い付く方法は失敗も多いのです。現に、町立病院に勤務する臨床検査技師の退職の意思表示の撤回が有効であるとされた事例もあります(旭川地裁平成25年9月17日判決)。

 労使問題では、日本マクドナルド事件の「管理監督者制度」は、残業手当て対策として採用されたのに失敗した例として有名ですが、道内でも「固定残業手当制度」についてのザ・ウィンザー・ホテルズ インターナショナル事件(札幌高裁平成24年10月19日判決)があります。一見お手軽な便法が失敗する例が少なくないのです。

A氏 持久戦をするほかないのでしょうか。

前田 いいえ。例えば、社員に自主退職をさせるよう仕向ける、いわば軟禁室を「パソナルーム」と呼びますが、一人だけ別室に配置され、会議や忘年会などにも呼ばれず、1日100件の飛び込みによる新規顧客開拓をノルマとされていた事案で、150万円の慰謝料が認められた事例もあります(大阪地裁平成27年4月24日判決、大和証券・日の出証券事件)。

A氏 手立てはないのですか。

前田 道内の失敗例を紹介してきましたが、実は有利不利を問わず、ルール化するのは難しいのが実情です。「お手軽本」などに簡潔に紹介された判例などに飛びつくのは危険この上ないのです。

法律、裁判は経営者の考えとはギャップがあるという厳然たる事実を受け入れ、個別具体的に考え抜いて対応することが重要です。そもそも、労働契約書や就業規則など基本的な事柄において、初歩的な不備があることも多いのです。

 

弁護士に相談を 解雇・解雇事由の客観性

maed00
弁護士に依頼をすることで、解雇事由に客観性が認められるか、手続きに正当性はあるかについてアドバイスをすることができます。また、解雇をした従業員から後々訴えられないために、労働環境を整えておくことができます。万が一訴えられてしまった場合にも、法律の専門的な知識から然るべき対応が可能です。

トラブルを避けるには、まずは弁護士にご相談されることをお勧めいたします。お気軽にご相談ください。

法律,裁判は経営者の考えとはギャップがあるという厳然たる事実を受け入れ,個別具体的に考え抜いて対応することが重要です。

 

 

そもそも、労働契約書や就業規則など基本的な事柄において,初歩的な不備があることも多いのです。

・傷病により労務を提供できないこと

・勤務態度の不良により、会社の指示に従って労務を提供できないこと

・労働契約の目的を達成できないこと

・経歴を詐称して契約を結んでいた場合 etc…

安易に解雇をしてしまうと、従業員から訴えられ、損害賠償請求をされてしまったり、会社の内部情報を労働基準署に言われてしまい、ケースによっては、企業活動が一定期間停止させられるということも考えられます。

まずは、指導・教育の実施や見直しを行い、企業として、努力をしたこと証明する必要があります。また、その際には、指導、教育の証拠を書面として残してください。そして、指導、教育の結果、どのように能力のない従業員が変わったのか、これも書面として記録を残してください。次に、配転を行います。こちらも、環境を変える努力をしたという証拠を書面として残してください。最後に、退職勧奨を行い、降格、降給を実施しましょう。それらを実施し、本人が納得した場合には、合意書を必ず作成しておき、かつ面談を行う場合には、変な言いがかりをつけられないように、二名で面談を行いましょう。

 

電話フリーダイヤル24時間 相談の流れ 申し込みフォーム