労働組合の概念
労働組合は、労組法2条本文、但書の要件、および、労組法5条2項の要件を満たすと、憲法および労組法上のすべての保護を受けることができます。
労組法2条本文の要件とは、労働者が主体となること、自主性があること、労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的とすること、組織する団体またはその連合団体であること、であり、但書の要件とは、使用者の利益代表者の加入を認めないこと、経理上の援助を受けないことです。
労組法5条2項の要件とは、5条2項に規定されている規約の必要的記載事項の要件を満たすことです。
上記要件を全て満たす労働組合を法適合組合といい、労組法2条本文、但書の要件を満たすものの、労組法5条2項の要件を満たさないものを規約不備組合、労組法2条本文の要件を満たすものの但書1号2号のいずれかまたは双方の要件を満たさないものを自主性不備組合といいます。
この中で、一番問題となりやすいのは、2条本文における自主性の要件と考えられています。
②自主性の要件について これは、労働者が自ら組織し、使用者の支配から独立した組織であることを要求するものです。 労組法2条但書では、使用者の利益代表の参加を許すもの、と、使用者から経費援助を受けているものについては、2条本文にいう労働組合には該当しないとされています。
この点に関しまして、裁判例では、同条但書に該当しても、実質的に自主性を有しているといえれば、労働協約締結能力を有すると、実質的に自主性の有無を判断すべきとしたものもありますが(高岳製作所事件 東京地決昭和25年12月23日)、近年におきましては、実質的に見て団体の自主性を阻害していない場合には、同条但書に該当しないと判断するものもでています。
具体的には、会社役員が参加する労働者団体について、当該役員が実質的に取締役としての職務を担っていたとはいえないと判断し、同条但書1号該当性を否定し、労働協約締結能力を認めました(伊藤製菓事件 東京地判平成12年2月7日)。 つまり、同条但書に該当すれば法適合組合とはなり得ないと捉え、その上で、同条但書該当性を限定的に判断していると考えられています。

前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。