【懲戒】無断欠勤該当性(1)
労働者が無断欠勤をした場合、それ自体は単なる債務不履行ですが、それが職場秩序を乱したといえる場合もあることから、多くの企業において懲戒の対象とされており、懲戒処分の対象となり得る行為です。
労働者による労務の不提供につきましては、それが欠勤にあたるか、そしてそれが懲戒事由とされる無断欠勤にあたるかということが問題となります。
欠勤該当性
労働者の労務不提供が欠勤にあたるといえるためには、使用者が問題とする日時について、労働者が具体的な就労義務を負っていたといえなければなりません。
この問題は具体的には、年休について使用者が時季変更権を行使した場合、配点や出向命令などにつきまして、労働者が異動先で就労をしない場合などが考えられます。
労働者が時季変更権に従わない場合には、使用者による年休の時季変更権行使の有効性の問題となりますので、法定有給休暇に関する解釈によることになり、配点や出向命令に関しましても、当該移動命令の効力によることになります。
ここで問題としますのは、一般的に、懲戒対象として掲げられている無断欠勤とはいかなるものかということです。
これは多くの場合、無断欠勤には届出はあるが正当な理由のない欠勤が含まれるのか、という形で問題となります。
裁判例には、就業規則に「無断欠勤」の場合のみ定められている場合、届出はあるが正当な理由のない欠勤を含むとしたものもありますが(三菱重工長崎造船所事件 福岡高判昭和55年4月15日、炭研精工事件 東京高判平成3年2月20日)、文字通りの無断欠勤の場合のみを指すとしたもの(三菱重工長崎造船所事件 長崎地判昭和47年1月31日)もありますし、当該企業において、無断欠勤につき、欠勤願いによらず欠勤した場合と欠勤願いに対して許可を与えられていないにもかかわらず欠勤した場合の双方を含む取り扱いをおこなっていると認められる場合には、承認を得られなかった欠勤は無断欠勤にあたるとされたもの(日本放送協会事件 東京地判昭和56年12月24日)もあります。
また、届出等、所定の手続きが取られていない欠勤であったとしても、使用者がかかる手続は不要である旨の言動をしていたと認められる場合には、正当な理由のない無断欠勤には該当しないとされています(岡田運送事件 東京地判平成14年4月24日)。
ですので、これらが問題とならないためには、就業規則の懲戒事由として、無断欠勤または正当な理由のない欠勤としておく必要があると考えられます。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。