定額残業代(固定残業手当)制度の落とし穴
労使問題では、一見お手軽な便法をお手がるに活用しようとすると、失敗することが少なくありません。
例えば、日本マクドナルドが直営店の店長、いわゆる「名ばかり管理職」に残業代を払わないのを違法とした裁判例は、
ご存じの方も多いと思います。深夜労働ならば、本当の管理監督者であっても、「割増賃金請求が可能である」と最高裁は明言しています。
定額残業代(固定残業手当)制度は、日本マクドナルドを事件など「名ばかり管理職」の問題が脚光を帯びてから利用することが多くなった仕組みですが,法律で定められた計算による割増し賃金額を下回らない限りで適法と認められるだけでのことです。実際に、札幌高裁平成24年10月19日判決。「ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件」があります。
外回りの営業などが多い場合に、「事業場外労働のみなし制」を導入する企業もあります。通常発生される時間を「みなし時間」としてあらかじめ設定しておくので、残業代が一切発生しないと考え,導入したのでしょうが、それは大きな間違いです。最高裁判所は、旅行会社の主張する募集型企画旅行の添乗業務であっても、この制度を適用できないとしています(14年1月14日判決。「阪急トラベルサポート残業代等請求事件」)。
労働法は労働者に有利にできています。経営者としては納得できないことであっても,この点を押さえておかないと労務管理の重要性を無視するブラック企業と評価されかねません。
法律上の制度の意味をきちんと理解し、自社の実情を具体的に分析した上で制度を採用しなければならないのです。
残念ながら多くの中小企業では、労働環境が十分に整備されているとは言いがたい状況です。確かに、それがやむを得ないという実情もあります。
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ートラブル・紛争に直面した場合の経営者・管理者のスタンス
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。