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【使用者側弁護士前田尚一(札幌)の視点】労働組合との団体交渉:労使紛争での経営者の料理方法を知り尽くしたプロたちとの対決!!

突然、労働組合が結成されたと、
そして,団体交渉の申入れ。
労使紛争での経営者の料理方法を知り尽くしたプロたちとの対決!!

 従業員との間でトラブル、紛争が起きても、個別対応となる場合がほとんどなのに、時に、労働組合との抗争となることがあります。
 そして、この事態となると,置かれた事態の実態におよそ気が付かないまま、使用者側はどんどん手に負えない方向に向かっていくというのが、実情です。
 その理由はというと、労使紛争での料理方法を知り尽くしたプロたちとの対決に、丸腰で立ち向かっているからです。
 以下では、その実情と対応策についてご説明いたします。

経営者が直面する現実

訴える

 従業員との間でトラブルが起きても、個別の対応となる場合がほとんどです(「個別的労働関係」)が、御社に限って、労働組合との抗争となるということがあります(「団体的労使関係」)。
 そして、この事態となると,置かれた事態の実態に,使用者側は,ほとんど気が付かないまま、どんどん手に負えない方向に向かっていく,あなたは既に負けている、というのが実情です。
 その理由はというと、労使紛争での料理方法を知り尽くしたプロたちとの対決に、丸腰で立ち向かっているからです。しかも、経営者側はそのことに気が付いていないことが致命的となるのです。

合同労組・ユニオン

 教科書的には、日本の労働組合の最大の特徴は、その多くが企業別に組織されている点にあり、日本の労使関係もこの企業別組合を基盤として成り立っている、と説明されています。しかし、中小企業の場合は、様相を異にします。

 それまで、労働組合とは全く無縁であった中小企業に、労働組合が乗り込んできます。
 解雇を通知された従業員が、「合同労組」とか「ユニオン」と呼ばれる団体(以下「上部団体」といいます。)に駆け込む。上部団体は、全面的な指導、バックアップを行い、まずは団体交渉を申し入れる。
 そして、執拗に、要求・主張を繰り返してくるというのが通例です。

 北海道であれば、「連合北海道札幌地区連合会(札幌地区連合)」、「札幌地域労組」、「連合北海道地域ユニオン」、「札幌地区ユニオン」、「札幌パートユニオン」、「北海道福祉ユニオン」、「旭川地域一般労働組合」、「札幌青年ユニオン」、「北海道ウイメンズ・ユニオン」、「札幌地区労働組合総連合(札幌地区労連)」、「札幌地区労連ローカルユニオン結」(自交総連)、「札幌圏連帯労働組合」、「釧路地域労働組合総連合」、「釧路地域ローカルユニオン」などといった団体が、「合同労組」・「ユニオン」、ここで上部団体と呼ぶものにあたります。それぞれの母体・背景があり、好戦性・弾力性などの行動様式も大きく異なります。
 マスコミを賑わしたものとしては、「キャバクラユニオン」とか、「ウーバーイーツユニオン」などがあります。

 解雇を通知したことを契機に労働組合が組織されたような場合、会社内では、組合員一人で活動する場合もありますが、それまで、特に仲が良かったわけでもなく、むしろ、他の従業員に疎外されていたような場合であっても、多くの従業員側が一致団結するという場合もまれではありません。
 ここでは、経営者と労働者との価値観自体が顕在化しますし、労使紛争の料理の仕方のプロである上部団体が、現場まで赴いて、徹底的に指導し、バックアップするので、対立が熾烈となることが多いです。

 そのような場合、団体交渉を申し込まれたばかりの当初の段階で、組合側から提示された書面が円満に協議していく内容であると思って、うっかり署名捺印したら、何事についても組合の同意がなければ決められなくなってしまったとか、

「団体交渉に社長を出席させろ」とか、
「決算書を提出しろ」


と要求され、応じざるを得なくなったなどという事例もしばしばみられます。

 プロである上部団体のメンバーは、中小企業の社長が団体交渉に出席して吊し上げられたり、会社の決算書を公表するのをひどく嫌がるということを熟知しているのです。

 しかも、このような要求には、ずっと昔の判例・裁判例において既に、それなりに法的裏付けまであるのです。

 例えば、賃上げ及び夏季一時金問題についての団体交渉に代表取締役自らはほとんど出席せず、その応対を専務取締役に任せきりにし、かつ、具体的事由・資料を示さずゼロ回答に終始することは、誠意をもつて団交を行なつたといえず、不当労働行為に当るとされたとして、賃上げ要求に対してゼロ回答をする場合にはその理由を説明するため社長の出席を必要とすると判断された事例(大阪地裁昭55・12・24」判決[大阪特殊精密工業事件])があります。
 また、最高裁判所判例でも、団交において、その経営実態等の具体的資料等を提示することなく要求を拒否し続けることは誠実交渉義務に反するとされています(最高裁平6・6・13判決[東北測量事件])。
 この二つの判決はとても実務的で重要なものと思われます。しかし、不思議なことに、学会で最高峰の学者先生の教科書的専門書には掲載されていませんでした。

 実際に私が途中から担当した事例では、解雇した従業員が、上部団体に駆け込んで、他の従業員と共に組合を作って、団体交渉を求め、他の従業員6、7人と上部団体6、7人と徒党を組んで会社に乗り込み、「社長は直ちに解雇を撤回し、謝罪せよ!」と要求してきたそうです。
 その、具体的な中身については、後ほどご紹介いたします。

 理屈の上では、団体交渉義務を負う使用者には労働者の代表者と誠実に交渉に当たる義務があるとはいっても、使用者に組合の要求・主張を容認したり、譲歩をしたりする義務まではありません。十分な討議の後、双方の主張が対立したまま、意見の一致を見ないで交渉打切りとなっても、誠実交渉義務の違反とはなりません。

 しかし、十分な討議といえるためには、何度も何度も団体交渉を繰り返す中で、状況によって、社長が団体交渉に出席したり、会社の決算書を提出しなければならない義務を果たさなければならないのですから、経営者としては、それまで団体交渉に出席して対応するだけでも大変なことでしょう。
 私は、30年の弁護士経験の中で、こじれた労使紛争が原因で、経営者が夜も寝られなくなり、体調を崩してしまった場面をこれまで何度も見て参りました。

ここで一呼吸。ご自身をふり返ってください。

 労働組合対応・団体交渉対策のキモは、「リーダーシップ」の獲得,に尽きます。
 しかし、当たり前のようなこのことを行うのは、至難の業なのです。
 実際、不慣れな経営者側は、動けば動くほど、迷路に入り込んで疲弊し、どんどん労働組合側にリーダーシップを取られていくのが実情です。
 ちなみに、平成一桁の時代に作成した、『団体交渉マニュアル』をご覧いただきましょう(公開のために一部改変済み)。
 団体交渉の場では、組合に対しどのような対応をしなければならないか、ほんの一端ですが、ご覧いただけるかと思います。
 もっとも、これを手元に置いても、その前提のトレーニングをきちんとしておかなければ、全く役に立たない性格のものであることを、念のため、申し添えておきます。ご注意ください。

労働組合の活動への対処の仕方-その知られない特殊性

・団体交渉の申入れに対し、どのような対応をするか
・団体交渉の場での対応の仕方
・上部団体との交渉の仕方
・労働委員会などでの対応方法
・労働組合結成の原因となった紛争・トラブルの解決方法
・労働組合がそのまま存続した場合の付き合い方

 などなど労働組合に対する対応は、特有のやり方があります。

 労働組合側から、企業側の対応が不当労働行為であるとして、行政機関である労働委員会に持ち込むことがあります。
 また、労働組合の上部団体のメンバーから、「あっせん」の活用の思いもよらなかった意図を聞いたことがあります。

 ところが、『労働委 企業も駆け込む』という見出しで、《労使紛争の解決機関である労働委員会に、労働組合との団体交渉に不慣れな新興・中小企業が駆け込む事例が相次いでいる。企業側が社外の大規模な全国型労組や合同ユニオンといった労組との交渉に対応しきれないためだ。労働委員会が間に入って調整する「あっせん」という解決手法が改めて見直されている。》とした上で、《「交渉責任者は労働組合との団体交渉は初めて。次第につらくなったのか、言動や判断が乱れるようになった」………》との新聞記事(日本経済新聞2019年7月29日朝刊)が目に入りました。

 ただ、私の経験に関する限り、北海道労働委員会は、労使間の紛争解決を図る北海道の行政機関とはいえ、労働者側・労働組合側寄りで処理する傾向があるとの印象があり、対応には注意が必要です。上記記事を読んでみて、労働委員会の行動様式を了知した専門家を伴わず、素手でいくのはいかがなものかと思った次第です。
 北海道労働委員会で不当労働行為と認定された事案を、中央労働委員会(裁判所でいえば、最高裁判所のような立場)に持ち込み、意に適った和解を成立させたことがあります。中央労働委員会では、各委員の見識、平衡感覚、妥当な解決への意欲に加え、委員会としての労働組合側との距離の取り方、対応の仕方は、和解への持っていき方は見事なものでした。

 労務管理・労働問題・労使問題は、経営環境を踏まえ、経営そのものと関連付けて抜本的解決を図らなければなりません。
 もちろん、企業においては、手早く早期に解決することが最重要事項の一つであることはいうまでもありません
 しかし、「早期解決」も、現実逃避のために相手方と拙速に妥協するのが実態であれば、かえって、将来に火種を残し、円滑な企業経営を阻害するものともなりかねません。
 拙速な処理は、将来に遺恨を残します。
 特に労働組合問題は、このような性質を潜在しています。

 今ご紹介いたした、北海道労働委員会では埒が明かず、東京まで赴いて、中央労働委員会で勝訴的和解を成立させたなどの事例は、私が関与する何年か前の、労働委員会での勧めに従った安易な妥協が災いした事案でした。

 当事務所では、労働組合が関連した案件で、最高裁判所まで行って札幌高裁の判決を破棄してもらったり、東京の中央労働委員会で勝訴的和解を成立させてきた事例もあります。
 いずれにしても、労働法・裁判の実際を理解し、異なる切り口でアプローチすれば、解決可能な案件もあるのです。

 ちなみに、これらの事件及び次の【追伸】で紹介する案件で登場した各労働組合はいずれも消滅し、もはや企業内に存在しておりません。
 それでも、最高裁判所まで行った案件に関わった労働組合の上部団体のHPには、今でも、私の似顔絵が残されています。

 当事務所では、企業の労働・労使関係における悩み・トラブルについて相談に応じています。
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お客様の声 (依頼者の感想)

〇 40代・男性の方(会社法務・顧問契約・労使紛争案件)

 会社は、札幌以外の地方都市にありますが、先生とは顧問契約を結び、1泊2日で札幌に赴き、毎月一度のコンサルを受けさせてもらっています。
 話は多岐に渡りますが、毎日仕事に追われている中で現場を離れ、私なりのリラックス、ストレス解消の機会にもなっています。

 さて、お付き合いの始まりは、もう10年以上前になります。
 父の経営する会社で、現場従業員のAの解雇問題で、労働組合が結成されました。
 私は専務になったばかりのころで満28歳のときでした。
 社長である父が側近として雇ったBが、本人が言うほどに営業の成績を上げることが出来ないことから、父との関係が悪くなっていたころに、ちょうど解雇問題がおきたのです。
 Bが音頭をとって、他の従業員ほとんどを引き入れ、地元の上部団体に駆け込み、組合を結成し執行委員長となったのでした。

 2回目の団体交渉から私が対応することになり、ほとんど一人で団体交渉に臨むことになったのです。
 団体交渉で、相手をするのは組合員となった従業員だけではありません。もう60歳近い闘志を始めとする数名が上部団体からの会社に乗り込んできて、数々の要求をしてきたのです。
 当初はどのように対応したらよいか全くわからず、問題解決のため真正面から対応しようとしたのですが、10数名からただただ罵倒される日々が続いたのでした。
 正直、その日の団体交渉を終え、家に帰って大好物のビールを飲んでも美味しく感じず、酔うこともできず、眠れない日々が続きました。

 そのようなとき、信頼できる方の紹介で先生に対応をお願いし、同席してもらうようになり、流れが変わりました。
 私だけのときは、組合はただただ罵倒して一方的に有利な要求を何か私に約束させようとばかりしていました。
 先生が出席するようになってから、そうもいかなくなりました。

 すると今度は、手を変え、専務ではなく社長を出せとか、会社の決算書をだせとか、会社からすると本論とは関係がないと思われることばかりを要求してきました。
 2、3か月綱の引き合いはありましたが、先生には、2、3度出席してもらった結果、社長が出席することも、決算書を提出することもなく、解雇問題については、妥結することができました。
 しかし、一旦組合ができた後は、何を決めるにも組合を通せということになり、賃上げ時期になると春闘で団体交渉を繰り返すということになりました。

 一度は、組合が突然ストを行うといって、シンパが何十人も会社の回りに集まったこともあります。しかし、会社としても大変でしたが、そのときも一応の手配をし、組合の思うがままにはならないよう対応できました。
 三度、労働委委員会までいったこともあります。
 その場でも、組合側は分が悪くなると、専務ではなく社長を出せとか、会社の決算書をだせと言い出します。
 このときも、上手く対応していただき、このような相手方の要求に応じることなく、会社が想定した内容で解決することができました。

 結局、その後まもなく、Aは個人的理由で退職しました。
 その後、Bと他の組合員が組合費のことで対立したとのことで、B以外の組合員全員が組合を脱退しました。
 まもなく、病気を理由に会社をさぼっていたことがばれたBは、会社を退職しました。
 そのため、組合は自然消滅し、今は存在していませんが、労働問題は全く発生していません。

〇 50代・女性の方(顧問契約・訴訟・労使紛争案件)

 ある日、思いがけない案件が発生し、前田先生の事務所にお伺いしました。その時に、「依頼者と協働作業でやらなければ良い成果は得られない」と先生がおっしゃったことを覚えています。どんな些細なこともお伝えしなければ、現場の状況は分からないと思い、私は出来る限りの情報をお届けしようと思いました。

 先生への電話、法廷でお留守の時はメール、FAX等で連絡を入れました。色々な方法で連絡を入れましたが、先生は何時も必ず、それに対する返事を下さいました。又、打ち合わせの際も、案件以外の雑談の中からも、先生は何かを感じ取って下さり、案件へ結びつけてくださいました。私の話の中から、何かを汲み取る感性には、いつも感心しました。素人の私の見る観点と、違う事を痛感しました。

 初めての記者会見や、法廷への出廷、不安と緊張の中、先生に助けて頂き、何とか乗り切る事が出来たと思います。色々な困難や様々な事柄に、逃げ出したくなったこともありました。でも「協働作業」の言葉を思い出し、何とか頑張ることができました。以前の職場でも、弁護士に依頼した案件がありましたが「協働作業」にはならず、質問にも答えが得られず、苦労したことがありました。

 前田先生への、私からのラブレター(連絡用のFAX)綴りは、莫大な量となって残っています。お忙しい中、それを全て見て下さり、回答を頂いた事に感謝しています。

【付】

 ここで、先ほどご紹介した案件の具体的内容を詳しくをご紹介しておきます。
 前半で、私がこの案件をモデルに対談形式にして雑誌の連載で執筆した記事を掲載いたします。モデルといっても、内容は、ほぼノンフィクションです。
 後半では、実際に対応した専務からいただいたお客様の声を掲載しておきます。

付:「他人事ではない。怖~い労働組合との団体交渉」(ほぼノンフィクション)

(初出:『財界さっぽろ』連載「会社を守る法律講座」第42回

 今回は、顧問企業の専務A氏とのエピソードを紹介します。

前田 お付き合いのきっかけは、もう十数年前になりますね。
A氏 私が専務に就任して間もない頃です。社長である父が、B氏を解雇したことがことの始まりでした。そこに目を付けたのは父の側近であったC氏です。営業成績を上げられず、父との関係が悪くなっていたC氏は、B氏の解雇を好機とみて音頭をとり、他の従業員を引き入れ地元の上部団体に駆け込み労働組合を結成しました。

前田 A氏が対応されましたね。
A氏 2回目の団体交渉から私一人で団体交渉に臨みました。上部団体の関係者も数名いました。

前田 大変だったでしょう。
A氏 毎日眠れませんでした。十数名から罵倒される日々でした。

前田 私がお手伝いをすることになったのはその頃でしたね。
A氏 組合側は私に一方的な要求を迫ってばかりでしたが、先生同席によって好転しました。
前田 そうは言っても、相手は戦術を変えてきましたよね。
A氏 さすがはその道のプロ。「社長を出せ」とか「会社の決算書を出せ」などと本論とは関係のないことを要求してきましたが、先生のおかげで、社長が出席することも決算書を提出することもなく妥結できました。

前田 組合ができるとそれまでとは異なる対応が必要ですからね。
A氏 何を決めるにも組合を通せと要求されます。昇給時期になると春闘で団交を繰り返す日々。組合が突然ストを決行すると言い、そのシンパが何十人も会社の周りに集まったこともありました。大変でしたが、先生とあらゆる場面を想定して、組合の思うがままにはならないように対応できました。

前田 北海道労働委員会まで持ち込まれたこともありましたね。
A氏 その時も組合側は「社長を出せ、決算書を出せ」と言い出しましたが、相手側の要求に応じることなく、想定した内容での解決ができました。先生の一挙一動を横で見ていて、さまざまな対処法があるものだと感心してしまいました。ちなみに、北海道労働委員会は、労使間の紛争解決を図る北海道の行政機関。ただし、経営者側からすると労働者側・労働組合側寄りで処理する印象があります。対応に注意が必要です。

前田 現在の労使関係は。
A氏 和解が成立してまもなく、B氏は個人的理由で退職しました。C氏は、C氏以外の組合員全員が組合を脱退してまもなく、病気を理由の会社をさぼっていたことが明るみになり、会社を退職していきました。こうして組合は自然消滅しました。以降、労働問題は全く発生していません。

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