雇い止め
「解雇」・「退職勧奨」の実践的対処については,
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有期労働契約は、契約において期間が定められているのですから、期間満了により終了するのが原則ですし、契約期間途中での契約解除(解雇)も考えられます。
しかし、契約期間途中で解雇するには、やむを得ない事由がある場合でなければならないとされ(民法628条、労働契約法労働契約法17条1項)、これは、無期労働契約についての解雇権濫用法理(労働契約法16条)より、厳しい制限であると考えられています。
また、有期雇用契約を期間満了時に、使用者側が更新を拒絶することにより契約を終了させることについては、雇止め法理(労働契約法19条)により制限され、期間満了のみを理由として、無制限に有期雇用契約を終了させることが認められない可能性があります。
労働契約法19条は、反復更新された有期労働契約であって実質的に期間の定めのない労働契約と同視できる場合、または、契約更新につき合理的な期待が認められる場合に、労働者による契約の更新ないし締結の申込みがあった場合で、使用者の更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなすこととしています。
この雇止め法理は、裁判例で確立した内容を法定したものと考えられていますので、いかなる場合に雇止め法理が適用されるかは、従前の裁判例の判断内容が参考となります。
例としましては、実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあると認め、特段の事情がない限り期間満了を理由として雇い止めをすることは信義則許されないとしたもの(東芝柳町工場事件判決 最判昭和49年7月22日)、期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということができない場合でも、その雇用関係が継続することに合理的な期待が認められる場合に、雇止めが制限される場合があることに言明したもの(日立メディコ事件判決 最判昭和61年12月4日)などがあります。
このような裁判例において、反復して更新されることにより期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められるか否かの判断は、業務の客観的内容、契約上の地位の性格、当事者の主観的態様、更新の手続・実態、他の労働者の更新状況、などからなされていると考えられます。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。