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成績不良従業員の解雇

 

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 成績不良を理由として、雇用期間の定めがない正規従業員を解雇する場合、いかなる場合に、解雇権濫用法理において合理的な理由とされる、労働者の労務提供の不能、労働能力または適格性の喪失・欠如に該当するのでしょうか。

 

   能力の欠如のみを理由とする解雇の効力が争われた事案は比較的少ないですが、成績不良である正社員の解雇の裁判例も増えつつあり、その際、裁判所は、解雇の是非につき、成績不良が解雇を正当化する内容・程度のものかを慎重に検討しつつ、諸般の事情を勘案して判断をしているといえます。

 

 

長期雇用が慣行となっている企業の場合

 

   長期雇用システム下で勤続してきた正規従業員を、成績不良を理由として解雇する場合には、長期雇用・長期勤続の実績に照らし、単なる成績不良ではなく、それが企業経営や運営に支障・損害を生ずるなど、企業から排除すべき程度に達していることを要するとされています(エース損害保険事件 東京地決平成13年8月10日)。

   ただし、その中でも中核的従業員については、高度で総合的な職務遂行能力が求められるという点に着目し、解雇を比較的緩やかに判断する事案も見られます(東京海上火災保険事件 東京地判平成12年7月28日)。

   しかし、この場合でも、解雇回避措置が求められ、それを経ないでなされる解雇については解雇権濫用と判断される場合があります。

   また、専門職の場合では、技術・能力・適格性が著しく劣っていて職務の遂行に支障が生じ、かつ、それが簡単に矯正できない従業員の性向に起因している、として解雇を有効と判断した例もあります(日水コン事件 東京地判平成15年12月22日)。

 

 

転職市場型企業の場合

 

   人材の調達を転職市場に依存する企業は、転職市場の存在を前提に、専門性を重視した定員管理をしている場合も少なくないですが、裁判所は、日本企業の長期雇用慣行下に形成されてきた解雇権濫用法理の判断基準・傾向を、転職市場に依拠して人材の調達・調整をする企業に及ぼしてきたと考えられます。

   つまり、解雇を有効とした事例は、長期雇用慣行下でも解雇が正当化される事例と考えられます(プラウドフットジャパン事件 東京地判平成12年4月26日、日本ヒューレット・パッカード事件 東京高判平成25年3月21日)。

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