障害者雇用促進法
1 障害者の雇用に関して、障害者雇用促進法という法律があります。
(1)この法律によれば、事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならないことになっています。また、待遇についても、不当な差別的取扱いをしてはならないことになっています。
(2)ここでいう「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいいます。
(3)障害者雇用促進法により、事業主にはさまざまな法的義務が課されています。たとえば、障害者雇用義務や合理的配慮提供義務です。
2 なぜこのような法律があるのでしょうか。
この法律が作られた目的は、次の4つの措置を講じることで、障害者の職業安定を図るためです。
4つの措置とは、
- 障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置
- 雇用の分野における障害者とそうでない者との均等な機会及び待遇の確保
- 障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置
- 障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置、です。
3 この法律は、このような障害者の職業安定という目的を達成するために、事業主に対して、さまざまな義務を課しています。
(1)障害者雇用義務
法は、事業者に対して、障害者を一定割合雇用することを義務づけています。これを障害者雇用率といいます。障害者雇用率は現在、民間企業で2.2%と設定されています(遅くとも2021年4月までに2.3%まで引き上げられる)。そうすると、現在のところ、46人以上の従業員がいる事業主において、一人の障害者を雇用する計算になります。
法定雇用率が達成出来ない企業は、障害者雇用納付金が徴収され、法定雇用率以上の障害者を雇う企業には、障害者雇用調整金が支給されます。
(2)合理的配慮提供義務
事業主は、障害者である労働者が、能力を有効に発揮できるよう、必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければなりません。必要な施設とは、点字ブロックやスロープ、多目的トイレなどのことです。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合は、合理的配慮提供義務は課されません。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。