弁護士は、自分の好みで選べ!
新進気鋭のA社長と当事務所の顧問先でA社長の先輩であるB会長の会話を紹介します。
A社長 以前、顧問弁護士の選び方、付き合い方についてアドバイスありがとうございました。おっしゃるとおり実力不足の弁護士は問題外ですが、医者と違って弁護士との付き合いはイメージが湧かないのです。
B会長 イメージが湧かない理由は、医者と違ってかかわる機会が少なく身近ではない点だろうね。われわれ経営者仲間の中にも、土日に行きたいとか、仕事が終わらないと行けないなど言う人がいるが、風邪をひいたら会社を休んで病院にいくだろう。本人は気づいていないけど、実は無意識に弁護士とかかわらないで済む理由を探し、先延ばしにしているんだよ。
A社長 どうしても頼まなければならない場合もありますよね。
B会長 その通り。私のように思いついたらすぐ連絡して解決し、自分の本来の仕事に専念するため弁護士を上手く利用している人は少ないけれど、どうしても頼まないとならないことはあるよね。餅は餅屋。専門家に頼まなければ進まないこともある。弁護士選びに迷ったら、やはり信頼のおける人からの紹介が一番。ただ、確率が高くなるだけで最後は自分で決めること。私が連れて行ったスナックがキミの好みだとは限らないだろう。
A社長 難しいですね。私は人を見る眼に自信がなくて…。
B会長 この世にただ1人と確信して結婚したのに、すぐに離婚という話はよくある。弁護士選びも同様。よさそうな人を選び、ダメならやめるのさ。当社の顧問弁護士は以前の弁護士に不満を抱いていたころ、たまたま飲み屋で意気投合した人なんだ。だいたい、弁護士自体が増えすぎてる。競争原理が働き質が向上するとか、選択の幅が広がったという見方もある が、私は幻想だと思うよ。むしろ質は全体として下がっている印象。1回で最適の弁護士に当たるとは思わないことだ。
A社長 弁護士にも〝当たり・外れ〟があるということはわかりましたが、道のりは遠いですね。
B会長 それではヒントを1つ。きちんとコミュニケーションをとれる相手かどうかが重要だね。前回助言した通り、弁護士は、法律の話に終始せず、依頼者が置かれた状況をきちんと理解し、トラブルの個性や特殊性を具体的に把握しなければならない。その上で今後どのような手を打ち、解決に向けた舵取りをするのが適切かを依頼者にきちんと説明しなければならない。人間関係の原点のような部分が重要なんだ。頭の中で考えてばかりいないで、何かきっかけを見つけて、まずは会ってみることだと思うよ。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。