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労働基準法上の人権擁護規定(不当な人身拘束の防止②)

不当な人身拘束の防止規定として、労働基準法5条は、使用者は、暴行・脅迫・監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって労働者の意思に反して労働を強制してはならない、と規定しています。

   具体的には、強制労働の禁止、契約期間の制限、賠償予定の禁止、前借金相殺の禁止、強制貯金・任意的貯蓄金管理の規制があります。

   労働基準法16条は、使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または、損害賠償額を予定する契約をしてはならない、と規定しています。

   労働基準法5条において、不当な人身拘束は禁止されていますが、ここでは、賠償額の予定も、雇用契約締結の際に、契約期間途中での労働者の転職等を契約違反として損害賠償額を予定することで、足止めに使用されたり身分的従属関係を作り出すおそれがあり、不当な人身拘束となり得ることから、賠償予定禁止が規定されたと考えられています。

   労働基準法16条の規定に関係して、現在では、労働者の技能修得のために、使用者が費用を出して、修学させた場合における、修学費用返還制度や、同業他社への転職の際の退職金減額等が問題となります。

   修学費用返還制度については、これが、使用者が自企業における教育訓練や能力開発の一環として、業務命令で修学や研修をさせ、修学後の労働者を自企業に確保するために一定期間の勤務を約束させ、その違約金を定めるという実質を有している場合には、賠償予定禁止規定違反となります(富士重工事件 東京地判平成10年3月17日)。

   退職金減額等については、退職後のある程度の期間に関する転職制限であるかぎり、社員の職業選択の自由を不当に拘束するものとはいえず、違法な賠償予定とはならないと判断されたもの(三晃社事件 最判昭和52年8月9日)と、退職後6ヶ月以内に同業他社への転職した場合、退職金を不支給とする旨の就業規則の規定は、顕著な背信性ある同業他社への就職についてのみ適用されるとして、その適用を否定した裁判例があります(中部日本広告社事件 名古屋高判平成2年8月31日)。

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