労働時間
労働時間とは、労働基準法上は、休憩時間を除いた実労働時間を指します。
弾力的な労働時間制度も増えつつありますが、原則として、1日8時間、1週40時間が上限となっています(労働基準法32条)。違反して労働者に労働させた使用者には刑事罰による制裁があり(119条)、これと異なる合意を労働者としても無効となり、無効部分は上記基準となります(13条)。一定の要件のもとに、時間外労働をさせることは可能ですが、使用者は割増賃金を支払わなければなりません(33条、36条、37条)。
労働者が過ごしたある時間が、労働時間といえるか否かは、時間外労働、出張中の移動時間や休日、時間外研修、持ち帰り残業、不活動時間等につき問題となります。
ここでいう労働時間は、あくまで労働基準法上の労働時間であり、客観的に判断されますので、就業規則等で労働時間とされた時間がそのまま労働時間となるのではありません。労働者の過ごしたある時間が、法律上、労働時間に該当するか否かを検討することになります。
最高裁判所によれば、労働基準法における労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです(三菱重工長崎造船所事件 最判平成12年3月9日)。
この考え方の元で、具体的ケースにおける労働時間性を判断していくことになります。
そして、その判断には、使用者の関与した程度、つまり、無関係であったのか、黙認・許容していたのか、命令・指示があったのか等と、当該時間の業務性の程度が検討されることになります。
例えば、始業前のミーティングや終業後の後始末等も問題となりえますし、休憩時間、仕事内容によっては生じうる仮眠時間であっても労働時間となりえます。
なぜなら、不活動時間であっても、単に実労働に従事していないというだけではなく、使用者の指揮命令下にないことが必要だからです。
労働時間という概念については、問題となる事柄により、例えば刑罰が適用される場合と民事上の請求権の場合とでは、解釈の幅が異なるとの見解もありますが、どちらの場合でも、実労働時間であり、かつ、その拘束性には強弱の幅があるとしても、労働者の行為が使用者の指揮命令下にあったものと評価できるかにより決まることになります。
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。