〝白黒つけない〟パワハラ対策《後編》
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「パワハラ」第2弾。解決編です(前編はこちら。)。
講演会やセミナーで講師を務めた際に「同じことをキムタクに言われるとウキウキするが、斜め横の席にいる○○課長に言われると身の毛がよだつ!それがセクハラ事件の特徴です」などと話すと、ほとんどの方が喜ばれます。ウケ狙いと思われがちですが、実は本質そのものであり、感情的・心理的要因が大きく影響するハラスメント(嫌がらせ)であるパワハラも同様なのです。
――会社ができる対策は。
素人向けの解説書には、パワハラの基準を理解することが重要であるかのように書かれていますが、前編でお話したように、国が公表している資料や判例・裁判例だけで、うっかり自己判断で白黒をつけて対応すると危険レベルが上がりかねません。また、パワハラ対策として事前の予防・防止対策は重要ですが、中小企業だと多くの場合、既に問題が発生しています。だから解説書を買ってみたり、誰かに相談するのです。 たとえ相談窓口を設置しても、担当者が信頼できない人物であったり、勉強不足だとかえって問題が増幅しますし、指導・教育・周知といった措置を講じても実態は機能せず、問題を更に悪化、複雑化させるケースもあります。
――何から手を付ければよいのでしょうか。
まず、問題を少なからず察知したのであれば、直ちに事実関係を把握し、解決に適した対策を実施するべきです。ハラスメント問題は金銭解決だけではケリがつきません。先入観や価値観に囚われず、慎重に対処する必要があります。中には当事者の一方が退職し、決着したかと思いきや「会社の調整の仕方が悪い」と会社の責任が問われた事例もあります。また、「抵抗がなければ同意あり」といった短絡的思考は排除されていること(強姦被害者についての「回避行動」の理論)はご存じでしょうが、時がたつにつれ、針小棒大な意識行動が現れる「過敏な被害者」問題も軽視できません。 会社としては、紛争にしたくないという思考に向きがちですが、労使問題に関わる法律、裁判の実際は、経営者の価値観からすると信じられないほど労働者寄りの基準、判断となっていることを理解してください。価値観を変える必要はないですが、世の中の動きをきちんと知らなければなりません。
会社の目の届かないところでの従業員同士のいじめ、部下の上司に対するいじめ・いやがらせもパワハラの範囲です。従業員の対立や問題社員の気配を感じる何かがあれば、すぐに対策を考えること。一般的な理屈の問題として捉えず、個別的な問題としてその状況を具体的に把握し、対策を考えてみることです。それでも判断がつきかねる場合は、ぜひご相談ください。
(掲載号:2015年8月)
前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。