経営者の確信は通じない? ― 使用者側弁護士(札幌)が伝えたいこと
経営者の「常識」は危険?!
――労働トラブルに直面したときの、正しい身の置き方とは

経営者が直面する現実
社員・従業員や労働組合とのトラブルは、どの企業にも起こりうるものです。
しかし、いざ問題が裁判や労働委員会に持ち込まれると、経営者が「当然正しい」と信じてきた常識が、裁判所や制度の判断基準とはまったく異なることに気付かされます。
多くの経営者は「自分の考えが正しい」と必死に説明されますが、実際には裁判所のルールの上でしか結論は導かれません。そのギャップに気付けるかどうかが、紛争解決の分かれ道です。
使用者側の基本的な心構え
労働トラブルに取り組む上で、経営者がまず理解しておくべき最低限の前提があります。
- トラブルは「紛争」に、問題は「損害」に発展する前に、できるだけ早期に手を打つ。
- ただし、安易な妥協は将来の火種となり、経営に深刻なリスクを残す。
- 弁護士任せの“スピード解決”が本当に自社にとって最善かどうかを冷静に見極める。
経営者が陥りやすい4つの誤解
労働問題で不利に立たされる経営者の多くが、次のような誤解にとらわれています。
- 従来の経営手法や社会常識で解決できる。
- 事実は一つで、誰が見ても明らかだ。
- 結論は決まっているのだから、長い話し合いは無駄だ。
- 「世間の物知り」のアドバイスで安易に解決できる。
これらの思い込みを捨て、現実に即した対応を取れるかどうかが経営を守る鍵となります。
経営者が持つべきスタンス
- 法律や裁判所の姿勢は、労働者保護を大前提としていることを理解する。
- 問題社員への対応は、放置せず「迅速かつ徹底的に」進める。
- 実態と手続きを重視し、書面化・証拠化を怠らない。
- 問題は潜在的に常に存在することを意識し、早い段階から分析・対応する。
- 労働組合・ユニオンへの対応や風評リスクも視野に入れておく。
最後に ― 経営者へのメッセージ
労働問題は、会社にとって「経営の根幹を揺るがすリスク」です。
放置も安易な妥協も許されません。
だからこそ、
- 迅速に対応する勇気
- 法律のルールを理解する冷静さ
- 徹底的に争う覚悟
この3つを常に心に持つことが、経営を守る第一歩です。
経営者の確信は、非常識とされるのが必定か?!
〈経営者側・使用者側弁護士(札幌)の視点0〉
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前田尚一法律事務所 代表弁護士
北海道岩見沢市出身。北海道札幌北高等学校・北海道大学法学部卒。
私は、さまざまな訴訟に取り組むとともに、顧問弁護士としては、直接自分自身で常時30社を超える企業を担当しながら、30年を超える弁護士経験と実績を積んできました。
使用者側弁護士として取り組んできた労働・労務・労使問題は、企業法務として注力している主要分野のひとつです。安易・拙速な妥協が災いしてしまった企業の依頼を受け、札幌高等裁判所あるいは北海道労働委員会では埒が明かない事案を、最高裁判所、中央労働委員会まで持ち込み、高裁判決を破棄してもらったり、勝訴的和解を成立させた事例もあります。