懲戒解雇と普通解雇:札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス
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懲戒解雇と普通解雇の関係におきまして、懲戒解雇と普通解雇とでは、有効とされるための要件が異なります。ですから、使用者が、懲戒解雇が無効と判断された場合に備えて、懲戒解雇通告と同時に、もしくは、懲戒解雇通告後しばらくしてから普通解雇の意思表示をすることもあります。
この点に関しまして、労働者に懲戒解雇事由が存在する場合に、使用者が懲戒解雇ではなく、普通解雇の選択をすることは問題ありません。
また、懲戒目的で普通解雇を選択した場合には、普通解雇の要件を備えていればよく、懲戒解雇の要件を充足している必要はありません(高知放送事件 最判昭和52年1月31日)。
就業規則等に、懲戒規定が存在しない場合に、懲戒解雇が通告された場合は、懲戒解雇という名称の普通解雇として、その効力が判断されることになります(ジップベイツ事件 名古屋地豊橋支判平成16年1月23日)。
懲戒解雇通告後に、懲戒解雇が無効と判断された場合に備えて、予備的に普通解雇の意思表示をすることも問題ありません(大商学園事件 大阪地判平成8年12月25日)。
懲戒解雇と普通解雇では、主張できる解雇事由の範囲に違いが存在します。
すなわち、懲戒解雇におきましては、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって、当該懲戒の有効性を根拠づけることはできない、とされています(山口観光事件 最判平成8年9月26日)。
しかし、普通解雇におきましては、普通解雇が、処分事由ごとに別個の解雇処分を構成するのではなく、全体として一つの解約申し入れと考えられることから、一般的に、解雇の有効、無効の判断にあたりまして、客観的に存在した事由をすべて考慮することができると考えられています。
しかし、懲戒解雇の効力が争われている場合に、懲戒解雇の意思表示に普通解雇の意思表示も包含されていたとして、仮に懲戒解雇が無効であっても普通解雇として有効であるとの主張が認められるかは問題となります。すなわち、懲戒解雇の普通解雇への転換の可否の問題です。
これに関しましては、肯定した裁判例(日本経済新聞社事件 東京地判昭和45年6月’23日)も存在しますが、否定した裁判例(三井鉱山三池鉱業所事件 福岡高判昭和47年3月30日等)が多くなっています。
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