傷病休職事由の消滅(職務特定の場合+医師の診断)(2)
「解雇」・「退職勧奨」の実践的対処については,
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傷病休職制度により休職していた職務が特定されている労働者の治癒の意味と判断基準、および、職務特定・不特定双方に関わる治癒の判断に際しての医師の診断について
職種・職務内容が特定されている事案での裁判所の判断につきましては、治癒とは、原則として従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復したときをいう、としたものがあります(昭和電工事件 千葉地判昭和60年5月31日)。
しかし、直ちに従前業務に復帰できないとしても、比較的短期間に従前の業務に復帰可能である場合には、短期間の復帰準備期間を提供したり、教育的措置を取ったりすること等が信義則上求められるとして、このような手段をとらずに解雇することはできないとするもの(全日本空輸事件 大阪地判平成11年10月18日)、従前の業務を通常の程度に遂行できなくなった場合には、原則として、労働契約上の債務の本旨に従った履行の提供ができない状況にあるとしながらも、他に現実に配置可能な部署ないし担当できる業務が存在し、会社の経営上もその業務を担当させることにそれほど問題がないときは、債務の本旨に従った履行の提供ができない状況にあるとはいえないとしたものもあります(カントラ事件 大阪高判平成14年6月19日)。
つまり、職務が特定されている場合には、休職期間満了時点において、雇用契約上特定された労務の提供がなしえない以上、治癒とはいえないとも考えられますが、休職期間満了時の回復が本来業務につく程度には回復していなくても、健康配慮義務の一環として、可能な限り軽減業務に就かせるという義務が認定される可能性があります。
・医師の判断
休職は就業規則や労働協約に基づき、使用者が発令します。ですので、休職の消滅事由である治癒の判断も最終的には使用者がなすべきものです(K社事件 東京地判平成平成11年17年2月18日)。
しかし、傷病の治癒については、復職の申し出に対し、医師の受診を命じることなく、復職を拒み続けた対応について、正当とは言い難いとして退職扱いが無効とされた事案(B学園事件 大阪地判地決平成17年4月8日)など、医師の診断を軽視したことについては、裁判所は厳しい指摘をしていると考えられます。
ただし、主治医の診断は、専門家の判断として重要なものとされてはいますが、職務内容に詳しくないこと、また、労働者からの希望が診断書に反映されることも考えられることから、絶対的なものではないと考えらえています。
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