突然の出頭要請・「労働審判」:札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス

 

-- 裁判所から,労働審判手続申立書等が送付され,一方的に決められた期日に出頭するよう呼び出されました。

前田 労働審判手続は,個々の労働者と事業主との間に生じた労働紛争について,事案の実情に応じた柔軟な解決を,迅速,適正かつ実効的に図るために,平成18年4月1日から始められた制度です。施行から2009年まで増加し,2010年以降ほぼ横ばいとなっていますが,横ばいといっても,全国で,毎年新たに3300件から3700件ほどの新しい申立てがあり,かなり活用されているといってよいでしょう。ひとりの労働審判官(裁判官)と労働関係の専門的な知識経験を有する労働審判員2名とで組織する労働審判委員会が,事件を審理していきます。労働審判員は,労使団体の推薦者の中からそれぞれ選任されているのが実際です。まずは話合いによる解決を目指し調停を試みます。調停で解決できない場合は,労働審判委員会は,労働審判という解決案の提示をします。納得できなければ,これは異議の申立てをすることができますが,法律に従ってそれをしないとその内容で確定し,相手方は強制執行を申し立てることができるようになります。

-- 先月退職した従業員が原告となって申立てをしたようですが,いきなりで全く納得できません。きちんと思ったこと,考えていることを伝えて適切に解決してもらうつもりです。まず,何をしなければならないのでしょうか。
前田 原則として,第1回期日は,申立日から40日以内の日に決められますが,第1回期日前の提出期限までに,自分の言い分を書いた「答弁書」と言い分を裏づける「証拠書類」を準備して提出しなければなりません。手続は,3回以内の期日で審理を終結することとされており,遅くとも,第2回の期日が終了するまでには,準備提出を終えなければなりません。そもそも裁判所での手続は,慣れないことです。労働審判員も,それぞれが労働者側・使用者側という立場に立つものではありません。自分だけで行うと,主張が労働審判委員会や相手方に正確に伝わらず,不十分なまま審理が進み,適切な解決が示されないまま終わってしまうという心配があります。通常,裁判所側でも,弁護士を代理人として選任することを勧めることが多いようです。
-- こんなにタイトに,答弁書と証拠書類を用意するなんてできませんよ。
前田 実は,そうおっしゃる段階で,既に誤った方向に進みかけているのです。確かに書類等の作成は大変で時間もかかります。しかし,もっと大事なことは,自分の主正確に伝わるというのはどういことか、という点です。これまでも,労働審判手続を申し立てられた経営者の方々から相談を受けましたが,多くの方が,自分の価値観で物を考え,また,実際にあったことはこういうことだ,申立てした従業員本人が知っているはずだ,とおっしゃります。しかし,労働審判手続が労働関係の法令を基準に審理されていくことは当然です。労働法というのはもともと労働者保護という観点で制定されており,労働者に有利に定められています。そして,裁判所は,経営者からすると,労働者よりとしか思えない判断をするのが実際なのです。また,労働法の分野では,特に,労働者側の慎重な意思の確認が求められ,事実関係・意思の確定性・確実性が重要となり,積み上げ,書面化が重視されます。ですから,経営者の考える道理は通用しないことが多く,そのことに気が付かないまま突き進んでいくと,予想外の結果となることがあるのです。労働審判が行われたのに安易に考えて放っておいて,突然元従業員から強制執行をされた経営者の方もおられました。
-- 一体どうしたらよいのですか。
前田 自分の価値観に囚われ,我田引水にならないよう,労働審判委員会がどのように解決しようとしているのかをきちんと観察して,事を運ぶことです。もっとも万全ということになれば,労働法に関する十分な知識や民事訴訟についての経験が不可欠であり,やはり労働法に精通した弁護士に頼るほかないというのが実際かもしれません。最後に付言しますが,労働審判に限らず,労働事件に巻き込まれた場合,すべきことは,その場をどう凌ぐかということに加え,今後同じ問題が発生しないようどうしたらよいかという二つの次元の違う事柄を考えていかなければなりません。

 

(2018年12月の記事です。)

0120-41-744 受付時間 24時間受付 相談料無料

メール受付

ご相談の流れ