残業代対策の極意。「定額」「みなし」の落とし穴:札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス

-- 先生,うちの会社も残業問題が悩みだったんですが,専門のコンサルタントに勧められ,定額残業代制度を導入し,一気に解決しました。

 

前田 定額残業代(固定残業手当)制度は,日本マグドナルド事件など「名ばかり管理職」の問題が脚光を帯びてから利用することが多くなった仕組みのようです。しかし,法律で定められた計算による割増賃金額を下回らない限りで適法と認められるだけですよ。

 

-- えっ,残業時間数にかかわらず定額を決めて支払えばよいと思ってました…。

 

前田 道内ではホテルの事例があります(札幌高裁平成24年10月19日判決。「ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件」)。裁判所は,定額残業代制度の有効性自体は認めましたが,手当を95時間分の時間外賃金であるとする会社の主張を斥け,月45時間分の残業の対価であり,月45時間を超えた残業及び深夜残業に対しては,法律に従った時間外賃金を支払わなければならないと判断しました。紙面の関係で詳しくは説明できませんが,裁判所は,判断の前提となる事情として,むしろ会社は従業員との間で,本来法的に許されない無制限な定額時間外賃金に関する合意をしていた,法律で上限とされている時間外労働を義務付ける手段として利用されたとなどと経営者側の非難すべき面を認定しています。

 

-- 実は,うちの会社では,外回りばかりの営業が多いので,コンサルタントには,「事業場外労働のみなし制」の導入を勧められているのですが……。

前田 外で働くため労働時間の算定が難しい場合に、通常必要とされる時間を「みなし時間」としてあらかじめ設定しておく仕組みですね。まさか,社長,導入すれば残業代が一切発生しないと考えているのではないでしょうね。

-- えっ,売上げを上げれば歩合給もあるのに,残業代が発生するのですか?

前田 もちろんです。例えば,最高裁判所は,旅行会社の主催する募集型企画旅行の添乗業務であっても,事業場外労働のみなし労働時間制を適用できないとしています(平成26年1月24日判決。「阪急トラベルサポート残業代等請求事件」)。

 

-- これじゃあ,どんな方策をとっても,問題は解決しないじゃないですか…。

前田 いいえ。そもそも労働法は労働者に有利にできているのです。経営者としては納得できないことであって,この点を押さえておかないと,労務管理の重要性を無視するブラック企業と評価されかねません。そして,法律上の制度の意味をきちんと理解したうえ,自社の実情を具体的に分析し制度を採用しなければなりません。まさか,コンサルタントから,タイムカード制を導入して上手く運用すれば,問題が解決するなどと勧められていませんよね。

-- えっ、なぜ分かるんですか?

 

前田 専門と称して怪しいコンサルタントが徘徊しています。気を付けてくださいね。どうも社長の会社は,労務管理関係全体を洗い直す必要がありそうですね。

 

(2014年12月)

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