【事案】サントリーホールディングほか事件:札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス


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サントリーホールディングスほか事件

DV

 パワハラによるうつ病発症・休職等を理由として損害賠償請求された事例として,「サントリーホールディングスほか事件」(第1審:東京地裁平成26年7月31日判決・労働判例1107号55頁,第2審:東京高裁平成27年1月28日判決・労経速2284号7頁)があります。

 最前線で活躍中のある学者は,第2審(控訴審)判決を[「新人社員以下だ。もう任せられない」,「おまえは馬鹿」等の言動を許容される限度を超えるものと判断]」と引用していますが(水町勇一郎)、具体的にはどのような事件だったのでしょうか。

 

 本件の事実関係は,良いか悪いかはともかくとして,よくありがち,起こりがちなものです。
 それだけに,具体的内容をじっくりと確認しておく価値がありそうです。

 第1審,第2審ともに,会社の責任を認め,上司であるCグループ長の不法行為を認めましたが,コンプライアンス室の室長Dの不法行為は否定しました。

サントリホールディングほか事件の事実関係[簡略化]

 

被告会社のグループ再編といった事情で,複数の会社が登場するなどで分かりにくいので,簡略化して,ご紹介します。

 

1 当事者

(1)A社は,清涼飲料,食料品,酒類等の製造および販売の事業等を営む会社である。
(2)Bは,平成9年4月1日にA社に入社し,18年4月1日からは,A社の調達開発部企画グループ(「企画グループ」)に配属され,この部署で,購買予算と実績の管理等を内容とする業務に従事していた。
(3)Cは,平成18年4月1日以降,企画グループの長として,Bの上司の立場にあった者である。
(4)Dは,23年当時,A社のコンプライアンス室の室長であった者である。

2 Bの勤務状況とCグループ長の対応

(1)Bは,平成18年6月頃,Cグループ長に対し,17年度の営業物品の購買金額を分類した資料を提出したが,Cグループ長がみたところでは不備の多いものであった。
 そこで,Cグループ長はBに対し改善の指示を行ったが,Bは,Cグループ長の指示どおりの資料を提出することはせず,その後もCグループ長が複数回にわたり指導したが,Bは改善に取り組もうとしなかった。
(2)また,平成18年7月頃,他の部署から,Cグループ長に対し,Bの勤務態度に問題があるので改善指導をしてほしいとの要望がされた。
(3)平成18年11月,Cグループ長は,Bに対し,営業物品の購買金額低減のためのリバースオークションについて分析等を指示した。
 しかし,Bの分析結果の報告についてCグループ長は,納得できない不十分なものと判断したため,Cグループ長は集計方法や問題点を確認するよう指示したが,BはCグループ長の指示どおりの資料を提出しなかった。
(4)また,A社では,平成18年12月頃,購買予算と実績の管理にかかる報告業務を効率化するために,この業務にかかる購買予算・実績管理システム(「予実システム」)を開発することを決定し,それを企画グループが担当することになり,Bがその主任となった。
 予実システムの開発作業に入って以降の19年2月6日,Bは,予実システムの開発は無理だといい出したため,Cグループ長がBに対し指導した。
(5)その後,納品期日の4月5日における予実システムの稼働開始に間に合わせる必要があったところ,Bの集計ミスなどにより確認作業に時間を要することなどがあったため,Cグループ長のBに対する注意指導の回数が増えたり,その注意指導の程度が多少厳しいものになったりすることもあった。
このようなことがあってBは,次第にCグループ長から注意を受けること自体が苦痛となり,精神的に追い詰められていった。

3 Bの鬱病の診断

 Bは,平成19年4月11日,E病院を受診(初診)したところ,うつ病に罹患しており,今後約3か月の自宅療養を要する旨の診断を受け,診断書を交付された。診察の際,Bは,医師に対して,仕事をやる自信がなく惨めな感じがすること,また,Cグループ長から納期を守らないことなどで叱責されたこと,「新入社員以下だ。もう任せられない」などといわれたことなどを話した。
 Bは,Cグループ長に対し,診断書を提出して休職を願い出たところ,Cグループ長から3か月の休養については有給休暇で消化してくれといわれ,Bが隣の部署に異動する予定であるが,3か月の休みを取るならば異動の話は白紙に戻さざるを得ず,Cグループ長の下で仕事を続けることになる,異動ができるかどうか返答するようにといわれた。
 Bが,Cグループ長から依頼のあったパーティーでの飲食物提供の手伝いについて,E病院に受診した際に,他の人に代わってもらいたいと伝えたところ,Cグループ長からかなり不満顔でいろいろいわれた旨の話をした。

4 Bの休職・復帰などとD室長の対応

(1)Bは,平成19年6月1日,企画グループからF部に異動したが,Bの精神状況は快方に向かわず,その後,Bが産業医の診察を受けた結果,2か月間の休職をしたほうがよいとの判断が示された。
 そこで,Bは,7月11日頃,E病院を受診して再度診断書を作成してもらい,A社にこの診断書を提出して8月末まで休暇を取ることにした。
 Bは,有給休暇を取得するなどしたうえで,平成20年7月31日までA社を休職した。

(2)Bは,平成20年8月1日からA社に復帰し,21年4月1日付でA社に転籍したが,A社が設けている内部通報制度を利用し,Cグループ長からBが受けたと考えているパワハラ行為を通報し,A社に対し,Cグループ長に対する責任追及と再発防止策の検討を求めた。
 Dコンプライアンス室室長は,23年6月30日以降,Bとの間で合計6回の面談やメールのやり取りを行った。また,D室長は,7月13日から8月1日まで,当時Cグループ長の周囲で勤務していた5人の者に対して,当時の状況を面談またはメールにて事情聴取した。
 なお,D室長は,Bとの面談において,Cグループ長の行為がパワハラに当たらないという理由について口頭で説明した。また,Cグループ長との面談において,Cグループ長のBに対する注意指導について行き過ぎがあった等反省に至らせた。

 

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