派遣労働者と黙示の労働契約
現在では、業務の効率化のために、労働者を自社で直接雇用するだけでなく、企業外の労働者を労働力として利用しています。その形態の1つに労働者派遣があります。
本来、職安法により労働者供給事業は違法とされますが、労働者派遣は、労働供給事業の一部を、いわゆる派遣法により合法としたものです。
労働者派遣とは、自己の雇用する労働者を当該雇用関係の下に、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させるもので、当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものをいいます。
つまり、派遣元と労働者の労働契約による労務提供は、第三者である派遣先の指揮命令でなされることになりますが、労働契約の当事者はあくまで労働者と派遣元となります。
これに対して、請負は、他の企業から業務遂行を受託した事業者が、自己の雇用する労働者を自ら指揮命令して受託業務に従事させることをいいます。
ここで、派遣法の要件を満たしていない違法派遣や、請負の形式をとりつつ、実質は労働者を他の企業の指揮命令下において労務に従事させる偽装請負が問題となります。
これは、発注元や派遣先が相手方企業との契約を解消しても、当該労働者が発注元や派遣先に地位確認等を求めてくる場合も考えられますので、違法業者のみの問題ではありません。
そこで、社外労働者と受入れ企業との間に労働契約関係が成立するかを検討することになります。
裁判例は、労働契約も黙示の意思の合致によっても成立しうるもので、正規の従業員とほとんど差異のない形で労務を提供し、派遣元企業の存在が形式的名目的なものにすぎず、かつ、派遣先企業が派遣労働者の賃金額その他の労働条件を決定していると認めるべき事情のあるときには、派遣労働者と派遣先企業との間に黙示の労働契約が締結されたものと認めるべき余地がある、としています(サガテレビ事件 福岡高判昭和58年6月7日)。
裁判例を検討してみますと、就労の実態に即して判断されることにはなりますが、判断要素として、受入れ企業の指揮命令の有無と、それに対する賃金支払い、人事権の事実上の保持や社外労働者の採用への関与の有無等が判断要素とされていると考えられます。
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