就業規則の変更は慎重にすべし!:札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス

顧問先紹介で訪れた社長との談話です。

-- 私が設立した会社も軌道に乗ってきました。これまで売上げばかりに眼を向け夜も寝ないで頑張ってきましたが,グレードの高い会社にしたいと考えるようになりました。そこで,これまで従来手薄であった社内規程の整備をしたいと考え,まずは就業規則の全面改訂を考えています。

前田 なぜ就業規則なのですか。

-- 実は,現在の就業規則は,助成金の支給を受給するために就業規則の作成が必要となり,お願いした専門家が持ち込んだひな形を手直しして労働基準監督に提出しました。形だけということで,私自身目を通したこともないのです。そこで,会社の将来のあるべき姿,ビジョンを明確に打ち出した就業規則を作りたいのです。

前田 立派なお考えだと思います。ただ,就業規則がリスク管理を目的とする企業と従業員のルールブックであることをきちんと押さえた上で,手続を進められた方がよいかと思います。

-- 具体的にどのようなことでしょう。
前田 例えば,労働時間には,法律上,1週40時間,1日8時間という縛りがあります。業務の繁閑や特殊性に応じて時間労働を配分でき,シフト制を活用する場合などに有用な「変形労働時間制」や,労働者が主体的で柔軟な勤務をするための「フレックスタイム制」,「事業場外労働のみなし制」,「裁量労働制」などを活用するためには,就業規則又は労使協定などについて法律上の条件を整備しておく必要があります。きちんとしておかないと,平均時間数では,1週40時間,1日8時間を満たしているのに,つまり総時間数は同じなのに,時間外割増手当を支払わなければならない事態になるのです。

-- 今は,労使一丸となって会社の成長を目指していますから,運用で対応し,実際的な規定は,従業員と話し合いながら,随時整備していけばよいのではないでしょうか。
前田 いいえ,従業員が増えると,すべての面で価値観が一致するということもなくなってくるのが現実でしょう。会社にとって合理的と思われる事項についても,容易に合意がとれなくなります。政府の進める「働き方改革」は制度を変えるだけでなく,労働者の権利意識をますます高めていくでしょう。労働基準法では,就業規則の作成・変更には,法律上,労働者の意見聴取義務はあっても,同意は必要がないとしても,従業員が増えた段階では,そのコンセンサスなしに就業規則の中に労働条件にかかわる新たな規定を創設するのが困難となることも予想されます。現在,運用している内容については,今の時点で法律に適った対応をしておかなければなりません。

-- なるほど。他に注意事項はありませんか。
前田 就業規則それ自体の変更にも,手続上,労働者の同意は必要ありませんが,判例や労働契約法では,労働条件を不利益に変更することは容易に認められないことも頭においておいてください。助成金受給のために形だけのつもりで作成した就業規則,もしかすると大変なないようかも知れないですよ……。

-- 何と。すぐにチェックしてみます。また,相談にお伺いします。

(2018年3月の記事です。)

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