業務命令
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使用者は、労働者が労働契約により労働力の処分権を使用者に委ねたことにより、労務指揮権を有します。
使用者は、労務の指揮それ自体にとどまらず、業務の遂行全般について労働者に対して、業務命令として、必要な指示・命令をすることができます。
労働者は、使用者に対して一定の範囲での労働力の自由な処分を許諾して労働契約を締結するもので、その一定の範囲での労働力の処分に関する使用者の指示命令としての業務命令に従う義務があると考えられるからです(電電公社帯広局事件 最判昭和61年3月13日等)。
業務命令には、例えば、就業についての上司の指示・命令があり、時間外労働命令、休日労働命令、出張命令、配転命令、出向命令、等も業務命令となり得ます。
この業務命令は、就業規則の合理的な規定に基づく相当な命令であり限り、就業規則の労働契約規律効(労働契約法7条)により、労働者は、その命令に従う義務を有します。
そして、この業務命令に違背すると、懲戒事由となり得ます。
典型的な例は、就業についての上司の指示・命令に対する違反です。
この場合、使用者の業務命令が、労働契約の範囲内の有効なものか、有効である場合、労働者にはその命令に服しないことにつきやむを得ない事由が存したか、等を検討し、懲戒処分の有効性を判断することになります。
そして、業務命令違反に対して懲戒解雇が行われる場合、当該業務命令の重要性とその違反による企業秩序侵害の重大性が考慮されることとなります。
裁判例には、業務命令を拒否したことを理由に懲戒解雇がなされた事案で、業務命令違反が、企業秩序を現実に侵害し、あるいは、その具体的かつ現実的な危険性を有する行為とは認められないとして、懲戒解雇事由に該当しないと判断されたものもあります(日本通信事件 東京地判平成24年11月30日)。
また、労働者の人権や尊厳を侵害するおそれが大きい場合、例えば、所持品検査のような場合は、それが義務付けられる場合に、当然には適法視されず、1.検査を必要とする合理的理由の存在、2.検査方法が一般的に妥当な方法と程度で行われること、3.制度として職場従業員に対し画一的に実施されるものであること、4.明示の根拠に基づくこと(西日本鉄道事件 最判昭和43年8月2日)、のように厳しい要件が課され、それらを満たしていれば、受忍すべき義務があるとされています。
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