採用の自由(総論)
憲法は、市場経済制度を採用することを明らかにしており、民法における契約法の基本原則である契約自由の原則は、市場経済秩序の一環をなしていると考えられています(憲法22条、29条)。
労働契約法も、労働契約が労働者と使用者間の合意により成立するとしています(労働契約法1条、3条1項)。
ただし、契約自由の原則も、憲法上無制約ではなく(22条)、憲法上の規定も法律による制限を当然に予定していると考えられていることから(27条、28条)、公正の観点や弱者保護の観点から、様々な法律上の制限に服します。
採用の自由については、憲法の制約原理をみても、主として労働関係成立後を想定したものであると考えられたこともあり、比較的規制が緩やかでしたが、近年、採用の自由を一定限度で制限する法律や法理により、採用の自由に対する制限は強まっていると考えられます。
これには、社会的弱者の雇用を促進するためのものや、労働組合の組織とそれによる団体交渉のためのもの、採用過程における不合理な差別を禁止するもの等があります。
採用の自由は、具体的には、雇入れ人数決定の自由、募集方法の自由、選択の自由、契約締結の自由、調査の自由を内容とします。
最高裁判所は、採用の自由について、「企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなるものを雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」(三菱樹脂事件 最大判昭和48年12月12日)としてきました。
つまり、企業には経済活動の一環として契約締結の自由があり、どのような者をどのような条件で雇うかについては、原則として自由とされています。
しかし、この法律その他による特別の制限、として、実際には、複数の法令により、採用時の制限がなされています。
採用の自由を制限している主な法令としては、男女雇用機会均等法、労働組合法、雇用対策法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法、障害者雇用促進法等が存在しています。
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