懲戒解雇に伴う退職金不支給とその限界

 

   懲戒解雇の場合におきましては、退職金が支払われないことが通常となります。

   しかしながら、懲戒解雇であるがゆえに当然に退職金が不支給となるわけではありません。

   退職金請求権は、労働契約上の根拠に基づき発生するものですので、退職金を不支給とするためにも、労働契約上の根拠が必要となりますから、就業規則や退職金規定等に不支給条項が存在しており、それに該当する事由がなければなりません。

   つまり、原則として、退職金の不支給条項が定められていない場合に、退職金を不支給とすることはできません(日本コンベンションサービス事件 大阪高判平成10年5月29日等)。

   ただし、懲戒解雇の場合に退職金不支給とするという事実たる慣習が存在する場合には、退職金の不支給が正当化されることがあるとしたものも存在します(東北ツアーズ協同組合事件 東京地判平成11年2月23日)。

   そして、不支給条項が存在していたとしましても、それに該当する事由がなければ、その条項の存在を理由としまして、退職金の支払を拒絶することはできないことになります。

   具体的には、懲戒解雇の場合に退職金を支給しない旨の定めがある場合に、自主退職、合意退職などによって退職した場合などが、これに該当します(東京ゼネラル事件 東京地判平成8年4月26日等)。

   懲戒解雇の場合に退職金の不支給条項が存在しても、その条項に基づき、直ちに退職金の不支給が正当化されるわけではありません。

   なぜなら、退職金には賃金の後払的な性格もあり、従業員の退職後の生活保障という側面もあるからです。

   このような賃金の後払い的性格を考慮しまして、裁判所によりましても、退職金の不支給は、勤続の功労を抹消ないし減殺してしまうほどに、著しく信義に反する場合にのみ許容されることになります。

   そして、不支給条項の要件に該当しない場合でありましても、権利濫用法理により退職金請求が棄却されることはあり得ますし、また、不支給条項の要件に該当する場合でありましても、非違行為の性格、内容、それまでの勤務態度、懲戒歴などを考慮しまして、退職金の一部ないし全部の支払いが命じられることがあります。

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