安全配慮義務(過重労働)

 

   労働者が心身の健康を害し、それが過重労働によるものとの疑いがある場合、労災補償の問題のほか、使用者としての安全配慮義務違反に基づく責任が問題となります。

 

   労働契約法では、労働契約において、信義誠実の原則が規定されています(3条4項)。

   そして、それに基づく当然の付随的義務として使用者は安全配慮義務を負います。

   労働契約法は5条で、使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする、と規定しています。

   この生命、身体等の安全には、心身の健康も含まれます。

   使用者が実施すべき必要な配慮とは、労働者の職務、労務内容、労務提供場所等の具体的状況に応じて、必要な配慮をすることが求められると考えられています。

 

   労働災害については、労災補償制度がありますが、労災補償制度は、労働災害によって労働者に生じた損害のうち一部分を簡易迅速に補償する制度としてはじまったもので、その補償範囲は拡大されていますが、民法上の損害賠償の全部の範囲には及んでいませんので、補償額が現実損害に合わない場合が生じます。

そこで、使用者の安全配慮義務が問題となります(なお、多くの事件で、安全配慮義務違反と不法行為責任(民法709条)の双方が主張されています)。

 

   安全配慮義務は上記のような理由で認められるものですから、特に危険な業務のみに課されるものではなく、ホワイトカラーの過重労働等にも安全配慮義務が及ぶと考えられています。

 

   そして、過重か否かの判断材料となる時間外労働には、 単に使用者が把握している労働時間だけでなく、いわゆるサービス残業、出張による移動時間、持ち帰り残業等も考慮される可能性があります。

 

   また、過重となる時間外労働時間に関しては、一応の目安と考えられている月80時間程度の時間外労働がおこなわれていた場合には、使用者は安全配慮義務違反の責任を負う可能性が高いと考えられます。

(康正産業事件 鹿児島地判平成22年2月16日、大庄ほか事件 大阪高判平成23年5月25日、米八東日本事件 新潟地裁平成24年12月6日など)

 

   安全配慮義務により、使用者は、労働者の職場における安全と健康を確保するために十分な配慮をなすことを要求されますが、安全と健康そのものに対する結果債務ではなく、その目標のために種々の措置を講ずる債務にとどまると考えられています。

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