合意原則
労働法は、労基法を中心とする労働条件の規定により労働者を保護し、集団的労働法により労働条件の維持・向上を図るという形になっています。 そして、これら労働法が対象としているのは主として労働契約です。 ですから、労働契約法は非常に重要な意義を有するものとなり、その中でも、労働契約法の基本原則である、合意原則、均衡考慮の原則、仕事と生活の調和への配慮の原則、信義誠実の原則・権利濫用の禁止を定めている3条は非常に重要な規定となります。 労働契約法は、その1条において、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則を宣言し、労働契約法3条1項は、あらためて基本理念として、労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、または変更すべきものとする、と規定されています。 労働法は、多種多様な法規制を行なっていますが、それは、労働契約が、労働者・使用者間に交渉力・情報格差が存在し、また、労働の他人決定性を特質とする契約であるからです。 そして、労働契約は労働者・使用者間の契約ですから、合意原則を基本として、労働契約が締結・変更されることは必要なことです。 そこで、法理念として、労基法が労働条件対等決定の原則(2条1項)を定め、この合意原則により、労働条件対等決定の原則を継承していると考えられます。 そうしますと、労働契約法3条1項の合意原則は、同法の基本理念となりますから、労働契約の解釈に際しては、合意原則を尊重した解釈を行なうべきということになります。 裁判所の判断でも、例えば、配転について、使用者が労働契約の締結によって包括的な配転命令権を取得したとの主張を、合理原則を根拠にしりぞけ、労働契約の個別的解釈により配転命令権の有無を判断すべきとしています(仲田コーティング事件 京都地判平成元年23年9月5日)。 また、合意原則は、個別的労働条件の決定・変更に際しましては、使用者側の説明・情報提供義務を基礎付けることになります。 労働条件の決定・変更に関する使用者の説明・情報提供の有無を検討し、そのような実質的手続を経由しない労使間の合意につきましては、合意原則に照らしその効力を否定すべきこととなります。 裁判所の判断でも、使用者が労働者との合意により基本給を減額したケースにおきまして、使用者が客観的資料を提示して大幅減額に関する理解を求めるための具体的説明を行っていない以上、労働者が真意に基づいて不利益変更を受け入れたと認めるに足りる合理的理由は存在しないとした判断があります(NEXX事件 東京地判平成24年2月27日)。
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