【懲戒】無断欠勤該当性(2):札幌の弁護士が企業側・経営者側・使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス
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労働者が無断欠勤をした場合、それ自体は単なる債務不履行ですが、それが職場秩序を乱したといえる場合もあることから、多くの企業において懲戒の対象とされており、懲戒処分の対象となり得る行為です。
労働者による労務の不提供につきましては、それが欠勤にあたるか、そしてそれが懲戒事由とされる無断欠勤にあたるかということが問題となります。
・逮捕、勾留による欠勤
職場外の犯罪行為の嫌疑で逮捕や勾留されたことを理由として不就労となった場合には、年休申請が円滑になされないことも予想されることから、無断欠勤該当性が問題となります。
裁判所の判断としましては、刑事事件の弁護人を通じて休暇届が提出されている場合には、使用者が休暇として承認したわけではなくても無断欠勤には該当しないとされたものがありますが(国鉄職員事件 東京高判昭和61年6月30日)、労働者の友人等による内容が不明確な休暇申請につきましては、休暇申請と取り扱うことはできず無断欠勤に該当するとされたものがあります(硬化クローム工業事件 東京高判昭和61年5月28日)
この場合、無断欠勤としてではなく、その他著しく不都合な行為を行った場合など、別の懲戒事由として懲戒解雇が認められる場合もあります(東日本旅客鉄道会社事件 東京地決昭和63年12月9日)。
・精神的不調を疑わせるような労働者の不就労
労働者が、明らかに精神疾患により欠勤していると認められる場合には、休職制度を有している企業であれば、それらの制度を運用することになりますし、制度を有していない企業であれば、普通解雇の要否等の問題となります。
しかし、労働者が、精神疾患によるものとは明らかではないものの、何らかの精神的不調を疑わせるような理解しがたい理由を挙げて欠勤をしている場合の取り扱いにつきましては問題があります。
裁判所の判断では、懲戒処分の効力に制限を加える傾向にあり、懲戒免職処分が裁量権を逸脱する無効なものと判断されたり(国・気象衛星センター事件 大阪地判平成21年5月25日)、必要な診断や必要な対応等をとらずに、直ちに正当な理由なく無断でなされた欠勤であるとして諭旨退職の懲戒処分をとったことが、使用者として適切な対応とはいえないとされ、正当な理由のない無断欠勤にはあたらず、諭旨退職処分が無効とされたものがあります(日本ヒューレット・パッカード事件 最判平成24年4月27日)。
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