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就業規則の効力(最低基準効):札幌の弁護士が使用者側の対応・心構えを相談・アドバイス

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   就業規則の労働契約に対する効力については、労働契約法により規定されています。

その効力として、最低基準効があります。

 

   労働契約法は、その12条において、「 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則の定める基準による」と規定しています。

   この規定は、労働基準法13条(労働契約に対する強行的直律的効力)と同様の規定ですから、就業規則が定める労働条件は、法令または労働協約に反しない限り、事業場の労働条件の最低基準として労働契約内容を強行的直律的に規律することになります。

 

   この効力から、就業規則に規定された労働条件の基準は、使用者が、経営上これを引き下げる必要が生じても、そして、これに労働者が同意している場合であっても、個別的労働契約によってはその基準を引き下げることはできず、就業規則の改正や労働協約の締結を必要とすることになります。

 

   そして、この最低基準効が生じる就業規則とは、届出(労働基準法89条)や意見聴取(労働基準法90条)は不要ですが、当該事業場の労働条件の基準を定めたものと実質的に周知されている必要があります。

 

   この最低基準効に関しての裁判所の判断を見てみますと、労働者から事実上の同意を得て、賃上げと賞与を、就業規則における賃上げ率と賞与支給率より低い率で支給し続けていたところ、ある従業員が就業規則通りの率での支給を請求したという事案において、黙示的に就業規則の基準を引き下げる労働契約が成立していたと判断したり(有限会社野本商店事件 東京地判平成9年3月25日)、使用者と組合が、就業規則上の退職金について、支給率変更を口頭で合意したところ、その後の退職者が就業規則通りの退職時の基本給額での退職金を請求した事案で、労使合意が労働者に周知されることにより労働契約の内容になったとすれば請求棄却となると判断しています(朝日火災海上保険事件 最判平成6年1月31日)。

 

   しかし、これらの判断については、前者については、賞与の一部を放棄しないという従業員が現れた以上、その年のその者の賞与については最低基準効力が働き、後者については労使合意が労働協約として書面化されていないことを理由に、就業規則の最低基準効が働くと考えられることから、批判的に捉えられています。

 

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